▼三月気分でいたら四月だったので四月いっぱい四月バカなのかもしれない。おい次は五月病がくるぞ。気をつけろ!
▼Humanity's Last Breathの新曲が恰好良いこと恰好良いこと。イントロのエレクトロニックな音と解脱を思わせるリリックの組み合わせがそこはかとなくサイバーで、そこにデスメタル的なキャッチーさも織りこまれてて楽しい。この調子でニューアルバムもポロッとドロップしてくれたら生きる励みになるからがんばってくれ頼む……。
今日のライブでもこの曲聴けるといいなー。
▼百合/BLの感情面を援用した作品であれば、ジャンル読み物として退屈でも許容されるのか(されるべきなのか)、と考えることが増えた。一時流行したスラングで言うところの巨大感情なるもので、空疎さが穴埋めされ、「尊いものとして消費すべき作品」に変質するかのような、奇妙な気配への疑念というか。
これ自体は、ジェンダー規範を気持ちよく消費する仕組み――すなわち百合/BL――が最前にあることを自明としているのなら、まったく気にならない。そこでのジャンル感(SFやFT)は部品ってわかるから。もちろんジャンル感覚がするどい作品もあるだろうし、それが素敵なことだってのは前提として。ただ、ジャンルフィクション然とした作品に触れたとき、その中身がただの百合/BLだと、だいぶキツいのだな。ジャンルフィクションでありながらジャンル的愉悦が釣りあわないと、それは無責任じゃねー……と思っちゃう。そういうのをある種のフォロワー的作品に感じがちで、楽しみがたくもあり苦手意識が強まってもいる。論理よりは生理の話であり、またどっちも同量盛ってあるべきという欲望の話でもあり、まあこれはこれでめちゃ無責任です。はい。
▼冒険小説の楽しさをあらためて心に注ぎたくてスティーヴン・ハンターの再読も進めてる。翻訳物に多い、ひとつのセンテンスが長くて恰好良い文章はやっぱ心地良い。短文や体言止めをうさぎのフンみたくポロポロこぼす文章で涙も枯れた心が一気に潤う。直近は狩りのときを読んでた。そしてハンター作品でいちばん好きなキャラってダニー・フェンかも、と思う。近くをパタパタ走りまわって気遣わしげにしてくるデカい犬みたいな男に弱い。
▼昔好きだった本を読んでみたり、聴いてた音楽を思いだしてみたり、ここ何年か、過去を掘り返す遊びをよくやってる。自分が誰だったか、にまつわる記憶を取り戻すための行為。十代の頃に求めてたようなお話をやるにあたって、記憶とその奥にある意識の連続性を再定義してやるための作業というか。
それ関連として、一桁年代中期から後期にかけて使ってたiPodのプレイリストってどんなだったか、曖昧になった記憶の奥底から発掘する遊びをやってた。だいたい二年くらいかけて。だいぶ気長な遊びだな。
当時、十代の後半はいまよりも精神的に胡乱だったこともあり、隙間を埋めるのにだいぶ難儀したな。でもかけた年月もあいまって、さすがに細部が埋まってきた。ほんで、よくよく考えたらiPod Shuffle(棒)を長く愛用してたから、実際にはプレイリストもなにもなかった。思い返してみれば、ただ曲を放りこんでくだけの乱暴な作りだったし。
ともあれ、その備忘リスト。
五十音/アルファベット順。
書きださずにほったらかすと絶対半年後には忘れてるやつ。 ・邦楽
ALI PROJECT/a Little Magic/犬神サーカス団/moon香奈/girugamesh/筋肉少女帯(特撮)/椎名林檎(東京事変)/J・A・シーザー/THEE MICHELLE GUN ELEPHANT/スチャダラパー/駄菓子菓子/電気グルーヴ/戸川純(ヤプーズ)/林原めぐみ/ヒカシュー/平沢進(P-MODEL)/The Pillows/Blankey Jet City/FLOPPY/BOOM BOOM SATELLITES/堀江由衣/POLYSICS/MASS OF THE FERMENTING DREGS/桃井はるこ(UNDER17)/Moi dix Mois/妖精帝國/米倉千尋/凛として時雨/六弦アリス ・洋楽
Arch Enemy/Atargatis/Avenged Sevendold/Billy Talent/Children of Bodom/Dark Tranquility/De La Soul/The Dillinger Escape Plan/Dimitri from Paris/Dragon Force/Epica/kidneythieves/Killswitch Engage/Jucifer/Marilyn Manson/Mortal Love/Nile/Nine Inch Nails/Rammstein/Rob Zombie(White Zombie)/Slipknot/Walls of Jericho/Winthin Temptation/Wu-Tang Clan/50 cent
日本語ロック、メタル、インダストリアル、アニソン、ゴスいV系、軽めのアングラ。われながらちょっと清々しい厨二感。
当時は金もないのでレンタルを多用し、邦楽メジャーはほぼそうで、音源もそんな買えなくてかなり飛び飛びだから、一作だけ延々と聴いてるパターンがかなり多かった。洋楽だと輸入盤をよく買ってた。値段がいまよりずっと安く、なにより一桁年代中盤の時点でたいていの輸入盤をアマゾンで買える環境が整ってた。国内盤でもユニバーサルが廉価施策をやってて、HMVの店頭にたくさん在庫があり、マンソンやNINはだいたいそれで集めてた。解説・対訳完備なのも嬉しかったのだよな。
いま好んでるアーティストを知りはしても、まだそんな聴いてなかったのも過渡期って感じ。ヨエコやつっこさんがそう。レンタルで置いてなかったし。ネット知人の影響でCoccoをちょっと聴いて、それでもまだハマってはいなかった頃でもある。他にも全然聞かなくなっちゃったバンドが入ってて、インダストリアル系は特にそう。単純に世間的に流行ってないし、作品は減ってくし、新規で聴くようなバンドもないからしゃーなしなんだけど。
そういえば、この頃は未知なる音楽を漁る手段というと、もっぱら個人サイト/ブログめぐりが主だった。華やかなりしインターネット前近代。グーグルの太平洋がまとめサイトや通販サイト、偽装サイトの残骸といったデジタルマイクロプラッチックにまみれる前だから、隔世の感が大アリ。自宅のネット回線を引き払ってたこともあり、検索するには携帯端末、もしくはネカフェを使ってたっけ。ほとんどは携帯端末か。W31SA(スライド式端末……)の小さな画面からネットを睨み、直で表示できないサイトは携帯端末向けに表示し直すプロキシサイトに通して、かなり迂遠なことをやってたのが懐かしい。まだyoutubeが一般化する前で、試聴のためになんか掲示板とアップローダーの中間みたいなとこから音声データを引いてもいた。なんたる無法! しかもファイル形式が3gpとか。気が長く、古くさい話です。ネカフェに行くと調べ物ついでに、音泉とアニメイトTVからアニラジをダウンロードしたりもしてた。懐かしすぎる……。
▼近年のネットはムカつくことも多いが、ちょっと根気があれば、曲なり、ラジオ番組なり、希少な音源を見つけられるのは良いなって思う。こないだとか、さよなら絶望放送と同時期に好んで聴いてた「週刊裏Gおふぁんたじー」がニコニコにあるの見つけて震えた。ニコニコ動画を取り巻く環境は苦笑いしかないが、ラジオ番組アーカイブとしての側面は本当にありがたいんだねェ。
▼2007年前後まで、iPodに高確率で入れてたお気に入りアルバムの10選。一個思いだしたら芋づる式に記憶がでてきたので、これもメモっておく。
筋少の大車輪/筋肉少女帯
遭難/東京事変
ゴールデン☆ベスト/P-MODEL
オーロラ/平沢進
蛇苺/moon香奈
Wasteland/Atargatis
Inhuman Rampage/Dragon Force
Divine Conspiracy/Epica
Zerospace/Kidneythieves
Golden Age of Grotesque/Marilyn Manson
Reise, Reise/Rammstein
Vol.3:The Subliminal Verses/Slipknot
いまでも聴いてるのは筋少とマソソソくらいか。ヒラサワとか、トランプ政権時代とウクライナ侵略を経て、全ッッッッ然聴かなくなっちゃったな。以前から反米陰謀論の人ではあったにせよ、パレードという曲を作れた人が俗悪な論理に深く、より深く肩入れする光景を見るにつけ、無理になってしまった。いまも無理です。寂しい。
▼陰謀論といや、「パラノイア合衆国」がめでたくも復刊してた。いったいいつの間に……(かれこれ三ヶ月前のことです)。
古くはアメリカン・インディアン憎しから、二一世紀にいたるまでの多くの出来事、国の内外、人種間と、さまざまな領域に「なんか敵がおるぞ」という恐怖心を傾けてきたアメリカ社会を紐解く名著。陰謀を欲しがってしまうストレスフルな欲望の構造はもちろん、文化的な背景とかもフォロー。陰謀論をウォッチャーとして楽しむならかなり大事な本ですな。合衆国陰謀フィクションおたくとしてはめっちゃお気に入りだったのだけど、ここ数年で値段が高騰して、人には薦めがたくなってたので結構嬉しい。みんな読もう。
ご時世がご時世とあってか、副題を「アメリカ精神史の源流を追う」に変えてんのは笑った。表紙もほんのり社会学の本っぽい。ポストトランプでカス度を高めていくご時世に当てこんだ復刊だろうし、真面目寄りの本であることをアピールしてるんだろうなー。ただやっぱ個人的にゃ旧版の表紙が好き。一ドル紙幣が切り刻まれ、パラノイアックにゆがんだジョージ・ワシントンの像が、実に怪しい雰囲気をだしててこれがまた。いや怪しいとダメなんだわな、現代は……。
The Last Ten Seconds of Lifeはもうただただブルータル・ドツキ=アイな曲が欲しいときに聴いてるやつ。オタク的なものとは違う、やったらめったらにオトコ臭いサウンドが気持ち良い。ある意味ではThe Halo Effectと同じように、ストレートなものを聴きたい気持ちを思い切り蹴っ飛ばしてくれるやつなのですね。
Humanity's Last Breathは、メタルに限って言えばここ十年くらいでもっとも激ハマりしてるかも。つべでBlood SpilledとLabyrinthianをはじめて聴いたときに一発でやられ、バンド体制を確立してからのアルバム三作品をすぐさま買っちゃった。どれも最高なのだけど、こと現状最新アルバムであるAshenは聴いてるだけで背筋が総毛だつ。黙示録を奏であげる手腕が驚異そのもの。正気を打ち砕かんばかりのブラストビートとダウンチューニングした暴虐ギター、そして悪魔的というよりは神話的なデス声の背後で、禍々しい音響の奥行きが、どうにかしてる音圧で渦巻き、あまりにも最高なのですね。暴力というか、邪悪。そして死。これこそ本物のSEAKAI NO OWARI。
アルバム全曲好きなのだけど、特にお気に入りなのがInstill。ブルガリア民謡風のクワイアを背景色とすることで得た、シンフォメタルとも異なるエキゾチックな重みが超絶恰好良い。デス、ブラック、シンフォの良いとこどり。Bloodborneのサントラと通ずる不穏さを大量に抱えこんでるから、そういう面でも好みにバッチリハマったのかもしれんな。ジャケットも再誕者の降臨っぽいし。ちなみに調べたら、過去にダークな世界観のネトゲでサントラ仕事をしてたようで、それっぽいテイストもちょっと納得。
四月には初の来日公演が控えてて、これも楽しみ。ハマってうわー来日しないかなーとか言ってた一、二ヶ月後にいきなり来日情報が飛びこんできたときには本気でビビった。啓示か? 啓示です。即限定チケット予約しました。ありがとう。