調整めんどくさいのであいてるカラム。
 調整めんどくさくなくなったら何かしら文章で埋まるかも。
 June.29.2019
なんもしてねぇ!ってわけではないにせよ、油断してたら日記書かないまま一ヶ月経ってた。その隙に三十路になりました。
サイトほったらかしてるあいだに、隠密裡に進めてる案件に大きな進捗があった。細かいことはまだ秘密だけど、自分の頭にしかないはずのものが他人の眼差しを通して「かたち」を得ることのスゲー加減は果てしなく、ちょっと尋常ではなく震えて右往左往してしまった。以前、ハルヨさんやパ氏にお願いしたときや、さまざまな人々がうちの子を描いてくれたときもそうだったけれど、自分の手で決してつけようのない輪郭がつく心地の快さには語彙失くすし、動揺が半端ではなくなってしまう。あるはずのないものがここにある、という。いやしかしスゲーとしか物言いの見つからんのはわがことながらヘボすぎる。
 このサイトにどれだけの人がお付き合いくだすってるかわかんないけど、お披露目が非常に楽しみでございます。長く見てくださってるかたには、これがこう?!って面白みがあると思うよ。
もろもろ甘味類を好んできた人生ではあるけど、タピオカはそういった世の流行に乗っかっていく嗜みのなかでも特段中の特段というハマりかたをしてる。餅みたいな食感が好きだからうまいこと好みにハマっちゃうね……コンビニで買える蒟蒻質のもどきと違うことを知った時点で負け。週イチで地元のお店に行き、どころか東京へ遊びに行ったときですら、友だちを連れて名の知れているというお店へむかってるから相当だと思う。タピゲル係数いくつなんだろうか。現状。
買ったりもらったり。
 *非常民の民族文化/赤松啓介
 *聖遺物崇敬の心性史/秋山聰
 比良坂ファイル 幻の女/朝松健
 帝都物語合本版1/荒俣宏
 ケルトの薄明/W.B.イエイツ
 じんるいのみなさまへ -わたしたちの場所-/伊西殻
 *愛なんてセックスの書き間違い/ハーラン・エリスン
 あした死ぬには、1/雁須磨子
 壊れやすいもの/ニール・ゲイマン
 *方形の円 偽説・都市生成論/ギョルゲ・ササルマン
 ロード・エルメロイU世の事件簿2上下/三田誠
 *ヒト夜の永い夢/柴田勝家
 ヨーロッパ 繁栄の19世紀史/玉木俊明
 *ホープは突然現れる/クレア・ノース
 スーパー・カンヌ/J.G.バラード
 *ビジュアルストーリー 世界の秘密都市/ジュリアン・ビークロフト
 *アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した/ジェームズ・ブラッドワース
 器官切除/マイケル・ブラムライン
 *イヴのいないアダム/アルフレッド・ベスター
 銭湯の女神/星野博美
 スズメバチの黄色/本兌有、杉ライカ
 東京入星管理局1/窓口基
 人はなぜ服を着るのか/鷲田清一
 *ウィアード2
 危険なヴィジョン1
 *現代語から古語を引く辞典
 誕生日に例年のごとく各位からプレゼントもらっちゃった。本当にありがたいよね。なかでも現代語から古語を引く辞典が純粋に物書きパラメータを補正するアナログ・ガジェットとしての効験に富んでて、手持ちの美しい日本語の辞典を併せるとボキャブラリー瞬発力が倍化してる。現代語から古語を引く、というのは要すれば、同義の古語を引っ張りだす類語辞典として使えるわけで、古めかしい言いまわしへの紐付けが少ない人間には超ありがたい。和ブラ……というかブラボ一・五次創作からこっちは重い語感も意識して遊んできたわけで、ずっとそれを補う道具を求めてきたのですな。バッチリはまった。これでうまいこと文章を恰好良いほうに精錬していきたい。
 自分では全然扱わなくなった(書いてる話とのすりあわせがあんまできなくなってしまった)もののひとつに、「都市」というモチーフがあるんだけど、それ自体は相変わらず好きで、世界の秘密都市方形の円は優先して読んでる。前者はさまざまな理由から地図に載らない場所を、鮮やかな写真と一緒に描き出してて楽しい。世界には意外とまだ自分の認知していない領域が残されてるもので、ブータンのタクツァン僧院やバダインジャラン砂漠のチベット仏教寺院、イエメンのシバーム城壁都市は、読んでて素でファイナルファンタジー……とつぶやいちゃった。シバーム城壁都市なんて数世紀前に建てられた高層建築が砂漠に蝟集している図の嘘くささに笑ってしまう。バーミヤン石窟群も、タリバンによるヴァンダリズムをめぐる報道とかで断片的な図を知ってたけど、引きで見ると圧倒的に異世界のていをなしているしな。忽然と現れる。広漠とし、あるいは峻厳な空間にある。そういう異物感に弱い。もちろんナショジオのこれ系の本でおなじみの、タイトルに付けてるテーマだけだと間が持たないから徐々に横ずれさせてく部分はあるけど、それでも世界に対する認識を押し広げてくれる感覚はあり、漠然とした情報で狭く思えてしまう世界がひらける感じは面白いな。世はいまだ豊穣。一方で方形の円は、都市幻想をシュルレアル風味で次々と並べたてていく調子でストレートに酔わせてくれて楽しいのだなー。いくつもの絵画が連なってるような味わいの、ビジョンの連続体って感じ。
 他の本も愉快度すごくて、なんか面白い本が一気に手許にきちゃっててんやわんや。徐々に崩していきたい……。
 以下はちょこちょこ買ってた本の話。スーパーカンヌは帝都読み直すかーと思ってブコフ通販を見たら入荷表示出てるの見つけてつい買ってしまった。バラードは短編メインの作家として見てたし世界シリーズ以外の長編をそんな読めてないから、ちょいちょい嗜んでいきたい。たぶん病理社会の心理学シリーズは好みに直結する。
 漫画はあした死ぬにはが善い。雁先生は日々を生きるなかでの切実さを描いていくのがホマーニうまく、瞬間的にぶわっとあふれる感情とか、ちょっとした心なさに小さな引っかき傷を作られる心地の描写にやられる。あとは登場する人々の絶妙なへっぽこさ加減(ちゃんとしてなさ加減というか)。この辺りはもう毎度おなじみで、四十代の独身女性に主人公の視座を据えてはいつつも、自分からかけ離れた物事みたいな解離は起こさせないものな……。かよちゃんの荷物と近い傾向感じる。続刊がかなり楽しみ。
この人も、またこの人も、と安易な追悼を繰り返すのは好ましくない。とは思いつつも、先だっての横田順彌先生につづいて鬼籍に入られた小川隆さんへ思いを馳せずにはいられない。翻訳調が微妙に読みづらい、とよく冗談交じりに言ってたものだけど、やっぱり好きではあり、ブルース・スターリング作品の大部分を訳出してくれたという大業への感謝もいまだ絶えないものです。
 ありがとうございました。そして、おつかれさまです。
 May.26.2019
こないだ遠出して、DIC川村記念美術館で「ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ」を見てきた。コーネルの箱自体はギブスンのカウントゼロで知った口で、それから幾年、チバ・シティを横目に通りすぎて佐倉市で見るというのは結構趣がある。そんな単純な感慨を超えてニコニコしっぱなしで見て回ってしまうような、すごい良い展示だった……。初期のコラージュ作品から箱のアッサンブラージュ、映像作品、手紙や日記まであつかってたこともあり、見応えからしてすごかったな。もちろんいちばんのお目当ては「箱」だったのだけど、やはりただその造形を見る(それこそネットで画像検索して見るような)行為でなく、展示に寄り添うテキストで牽引されながら追っていくと心地がまったく違うな。というのもコーネルのことをウィキペディアの情報以上には知らず、伝記も絶版・高騰のせいで読めていなかったからで、テキストの語りがていねいだったからことさらに感じたのでした。
 シュルレアリスム作品――マックス・エルンストの百頭女に触れることで影響は受けつつも、それそのものが持つ悪夢/混乱/性的な部分を避けて運動そのものに身を浸さなかった、とのスタンスをとってたのは知ってたけど、作品が持つそうした考えに沿った性質をすこぶる強く感じたのは、間近の実物を見てはじめてだった。リズムを同調させる、とは展示のテキストに記されてたことだけど本当にそれなのだな。挿入された違和で衝撃性を突きつけるデペイズマンは全然なかった。初期のコラージュ作品でも図の組み合わせはいっそ自然で、平面上のそれが抱かせる戸惑いは些細な、ごく薄っすらとしたもの。箱となるとリズムを一層に調えることで穏やかに、そして鮮やかに木枠の内側へと「時間/瞬間」を切り取る。しかも、そこでは存在しない架空の空気/大気≠ェ物理的に実在し、ガラス一枚を隔てたところに密閉されている。さまざまな角度で見るほど、時空間が、切り取られたときのままでそこに生きていることを確信してしまう。なんて趣に心底揺さぶられ、異世界に触れる心地に嬉しくなる一方だった。無限音階のテンション版みたいな。ホテルシリーズ、「無題(北ホテル)」はことさらにそうした趣が強い。コーネル自身はニューヨークを出ることは滅多にない人だったそうで、そんな人が外界に隣りあわせるホテルの壁の白≠綴じているというね。
 これぞ箱、と漠然としたイメージで見かけを知ってた「陽の出と陽の入りの時刻、昼と夜の長さを測る目盛り尺」も見れたし、「無題(ピアノ)」も見れたし、夢見心地っぽさあったな。後者なんかはオルゴールが最下段に秘められ、裏側のしかけをまわすとメロディが鳴る、というものなんだけど、そばに音源を入れたヘッドホンがかけてあるという至れり尽くせり感。音を聞きながらディテールを眺めてるのは至福。他にも「占星術の娘」とか、天体モチーフのものは少し懐かしめで牧歌的な趣を帯びて、平沢進のソロ前期作品であるとこのヴァーチュアル・ラビットを聴きながら眺めたいなーとか思ったり。なんかもうひたすら箱、箱、箱となってた……。とはいえ他にも手仕事をしていた部屋や材料を収めた写真があり、誰かと交わした手紙もあり、全方位から囲いこんでくる感じは楽しかった。展示の序盤からしてバレリーナであるタマラ・トゥマノヴァ(この人をあつかったコラージュは本展のメインイメージになってる)からの手紙があったしな。好きでコラージュ作ってた相手から「あなたが使えるような素材送りますね」と送ってもらえるのすごい。陳列された手紙にはマーク・ロスコの妻から送られたものもあり、コーネルがロスコの娘さんにロスコの好きな画家の本をあげて、それへの返礼とばかりに幼い手による天使の絵が一緒に入ってたり。かわいい。さしたる得体のない伝聞から人見知りな印象があったけど、意外とコミュニケーションが好きなおじさんだったとうかがえた。
 惜しむらくは、図録が刊行延期してしまったことか。メモ帳を忘れたので名前を憶えられなかった作品もあり、記憶からこぼれ落ちてるものも多そうだけど、思うところを何もかも上回って兎角楽しかった。あと図録に関しては箱の仕様を三種類から選べるようになってて、さすがに眼を白黒させちゃった……(Aで予約した)。
その後、帰りがけにまた赤羽を散歩してきた。清掃工場のそばをうろついたり、中学校の前を通って独特のにおいにノストでアルゴスな気持ちを刺激されたり。最後にうろついた赤羽台団地は出入りできないようになってて、前回訪れたときに周辺を散歩してて本当によかったなと思ったり。寂しくはあったけど、無人の空間のそこかしこを囲いが覆いこみ、白い壁面に赤信号が点滅してる光景もそれはそれで良かった。不吉。雑草の生え加減とか、人波からの分離感とか、幼い頃に読んだ怖い話や都市伝説の本が抱かせた都市の闇によく似てる。
 May.22.2019
自転車の乗り心地がだいぶ快調で、嬉しくてずっと乗り回してたら体力が底をつきて具合悪くなり吐いたりしてた。歩きまくるのそうだけど、身体感覚が拡張されていく感覚は急激に楽しくなる。加減がわからない。
なんとなく倫理観があう作家というのがいて、現状における最たる人がヤマシタトモコなんだろうな、とか思ったり。松田洋子と並ぶ。
薦めてもらってた、つか、読んで……と三百円渡された、かわすみ非常さんの「愛する価値もない」を読んだ。メンヘラBL良い。けどこれに関して何が良かったか、を表明するのに差し障りがある気がするので委細は伏せる。ただただ言えるのは、しようもない泥濘に伏せって、ギリギリ呼吸してる状態なのにヘラヘラ笑う以外何もできん人の、ギリギリで命の釣り合いがとれてるだけの表情が好き。そこにむく微妙に安全圏に半歩残してるような視線とか、「自分でも嫌なんだよ 自分のこと好きって言ってくれる人に迷惑かけるなんてさあ」や「自分をもっと大切にしろよー」だなんて手遅れになりかけている舌がなめらかにこぼす感じとかも。
 強く思いだすのはTAGRO作品でも特にお気に入りなほうであるマフィアとルアー(に入っているお話たち)であり、また同時にそれより酷薄で、主人公二人が肩を並べても、セックスをしても、やたらと寂しくなるの、良いね。
買ったり。
 ロード・エルメロイU世の事件簿 case.剥離城アドラ/三田誠
 影の中の影/月村了衛
 チョーク!/チャック・パラニューク
 鳥籠の家/廣島玲子
 魚の文化史/矢野憲一
 借りてるチョーク!を読みはじめたらブコフ通販からチョーク!の入荷お知らせメールが来る、というなんともいえないやつを味わった。買える分にはありがたいけど、タイミングってものがありましょうよ。
 型月は中高生時分に入れこめるだけ入れこみ、その後、文芸的な趣味の移り変わりとか偏りと一緒に源流へのディグりをやることで出来不出が気になりだして、すっかり離れてしまったんだけど、なんかこの頃また関心の浮き沈みが来てる。新規で触れられるもののないサイバーパンクから伝奇/超伝奇へ、精神的比重が寄ってるからってのが大きい。そんなわけでロード・エルメロイ読んだんだけど、これがちゃんと面白いのだな。原作者(と呼べる筋の人々)がやってきたものごとへの客観視、というか、あんまり上手でない手順でやられてきたことを整理してる。カバラ周辺や天使を設定上の土台にした異形の城での殺人事件。そういう広義のミステリを援用した形式で、小説として、そこそこていねいなFate世界観の語り直しをやってる。その手つきがちゃんと楽しい。お話のうえで、世界を構築している過剰な情報の群れとしての、魔術が跋扈している世界観という設定を開陳していく手付きが、ちゃんと衒学趣味のかたちで成立してる。奈須きのこが好んでいた京極夏彦への先祖返り、と呼べるのかことによっては。自己完結的な設定の羅列で詰め寄らず、こういう世界に、こういう状況がある、と適度な距離で語りだせるのは大事だね。人物像を描く上でもさほどいやみさがなくてよかった。直接的ではないかたちで超強くてお人好しで、それが何かを背負っているが故にひどい目にあう人。魔術なるものに関わるが故に精神性が過剰な凝り性たち。求めるもののために視野狭窄しちゃってる人に接触してくのが、高みに達することはできない、とすでに知っている人だからこその間合いなのかも。これがいわゆる本筋的なものだとみんなして視野狭窄なふうな趣をもち、それは読んでて疲れる(と記憶してるけど好んで触れてたの十年以上前だしアテにならんよね)。
 やっぱり小説家としてのキャリアを持ってるほうが上手に語りの手順を踏めるし、そういうところが三田誠は強い、と、言うと単純に悪口になっちゃうか。とはいえそういう手順の踏みかただけでなく、文章がきっちり小説している点も含め、こっちのが読み味は圧倒的にいい。型月から離れてしまったのも、わたし自身としちゃ好ましく思えない日本語、語彙選びで記述されているからだしな。お話自体は前哨戦。描かれた事件自体はまだ小さくて以降への布石だし、その布石の先を読んできたいと思えたから、できればテンポよく最後まで文庫化していってほしいもんです。
ふとFGOのフランシス・ドレイクが高乃麗さん声だと知って頭がパンクしたのも絶対影響大。かわいい……。高乃麗さん、吹き替えと90sアニメで馴染んできただけにドキドキしてしまう。かといってプレイするかと言われたら絶対しないけど……。
 May.16.2019
こないだ書いた感想で、なんとなしに見得切り感のある語調からのリンク貼り間違え(リンクタグをコピペして修正するの忘れてる)をやっており、もう恥ずかしくって自分でも笑ってしまった。寝る前に文章打つとショボいミスをやるからよくない。日本語の間違いならまだしもだな、きみ(いやそれも勘弁はしてほしいのだけど)。
自転車を買い替えた。そろそろダメそうだな、と睨んでたら案の定ダメになり、ギアは壊れるし、チェーンは頻繁に空転するし、かと思ったらブレーキワイアは切れるし、もろもろがだいぶおしまいな状態だっただけに財布が心許なかろうといたしかたなし。今回はダホンSUV買った。良い自転車だといいな……と願うのはまだ届いていないからで、ダメな個体が届かないよう祈るばかり。不安。先日もBluetoothイヤホンを買ったし、今年は必需品だけど買い替えタイミングの微妙なものを更新してるな。こういうのをやると気持ちの上ではわりとスッキリするもので、あれだな、ゲームでメイン装備を更新したときと似てる。ブラボで聖剣入手したときくらいの感じ。
買ったり。
 クトゥルー12/アンソロジー
 青心社のクトゥルー、所有状態が断片的だから古本屋で安いのを見つけるとつい回収してしまう。どれを持ってるか思い出せなくてたまに重複させちゃうんだけど。
 May.13.2019
誰かが光のなかにいる、あるいは光そのものであるということは素敵なことで、輝きがあればこそ自分は自分の場所を知り、勝手な話だけど、誰にも求められてない静かな道は照らされてゆっくりと遠くへと行けるなー……とか思うことの多いこの頃。行った先から戻ってくるにせよ来ないにせよ。光のなかに立っていてね、とはクープランド作品に記されたことばだけど、そう思う時間が多い。相容れない何かへの感情的な反射が生じることだってあろうけど、それは長つづきせず、文字通りに瞬間的で、結局行き着くところは決まってる。何らかの福音があるように。漠然とそう思う。自分が幸福になんぞ一ミリとして指をかけられない分、せめて人々は穏やかであるように。なんてね。
相変わらず淡々と作業を埋め、逃避行動として読まなくなった古本をメルカリでちまちまと処分している。クリスタルパックで包み、封筒につめ、という工程をしてるとちょっと心が落ち着く。とはいえ処分するのとほぼ同等の速度で本が増えてるから、無間地獄感がちょっとある。
買ったり。
 ケルベロス第五の首/ジーン・ウルフ
 感情天皇論/大塚英志
 探偵ダゴベルトの功績と冒険/バルドゥイン・グロラー
 裸婦の中の裸婦/澁澤龍彦、巖谷國士
 みんな行ってしまう/マイケル・マーシャル・スミス
 希望 行動する人たち/スタッズ・ターケル
 恋煮込み愛つゆだく大盛り/にくまん子
 泥の女通信/にくまん子
 チェンソーマン2/藤本タツキ
 ファイアパンチ1〜8/藤本タツキ
 きれぎれ/町田康
 「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に実在したので10万字くらい書けて紹介する本/山下泰平
 怪奇小説傑作集2/アンソロジー
 図録 シュルリアリスム展 パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による
 おおむね、しばらくほったらかしてるあいだに買ったなかで覚えてるやつ。自分のじゃないからカウントしないけど、ブコフでカウントゼロとモナリザ・オーヴァ・ドライヴを三百円くらいで入手したりもしてた。完全に友だち用。
 舞姫以下略がすごい面白かった。文学史の上で黙殺というか、まあ別にほったらかしでいいでも誰も困るまいて……みたいな扱いをされてるらしい明治時代のエンターテイメント周辺を掘っていくやつ。戯作、講談速記、娯楽小説、犯罪実録などなどとひっくるめて「明治娯楽物語」という荒唐無稽の群れが隆盛していく流れは、百年越しのラノベ台頭に似た勢いがあって、その善し悪しみたいな質感もよく似通ってて、それを語りだす筆者の身も蓋もなさがすごい良い。前半で「光り輝くヤクザが悪徳キリスト教団を討ち滅ぼす物語(語感が胡乱)」として紹介されてる「緒方力丸物語」周辺が、なんだか今っぽさを感じてへぇーと思う部分が多かった。児雷也や白浪五人男、と別作品のキャラや設定をマッシュアップしてく手付きね。敵として設定されたキリスト教団にしても、尋常ではない付加効果をもたらす信仰とかバカ設定がすごい。筆者いわく伏線の無駄遣いやらであんま面白くないらしいけど、こういう無茶苦茶のための手付きがのちに花咲くものたちの礎になってんだろうな、とかちょっと思った(遠因というか礎というかはいつの時代も大事だよね)。
 上記の語りの他にもわたしが好む意味合いとしての「伝奇」の歴史をめぐるうえで重要なこともたくさん入っていて、これで強く思い出したのが「伝奇ゲームファンのための日本伝奇入門」だった。その昔、すごい好きだったサイトに魚石庵というとこがあって、そこで掲載されていた紹介記事。うちのサイトではサイバーパンク小説案内みたいのを載せてるんだけど、あれを書いたのも魚石庵さんの影響だったりする。中世から月姫まで――と、一桁年代に相応しい語りの素晴らしい記事なので、はじめて知ったという人は是非アーカイブでご覧あれ。まあ消えたよそのサイトのアーカイブを見ろってのはマナー的によくないかもだけど、そこはそれ。読むとわかるのだけど日本伝奇入門は明治期においてかなり抜けが多い。そこに舞姫以下略が、笑ってしまうほどバッチリとハマって補正を駆けてくれるのですな。もちろん渉猟していた分野の違いが生む断絶であり、これを悪く言う気は毛頭ないのだけど、<江戸後期の荒唐無稽な物語は一旦なりを潜めます>と評されていた期間にこんなに、いっそ呆れちゃうくらいの無茶な饒舌が跋扈していたのか、と考えるとテンションが上ってしまう。身体が豆腐のように四角張っている豪傑が大暴れする話。忍術に合流するメスメリズムや動物電気。他にも細々と異形たちはいて、それが忘却されまくっていたことを突きつけてくる。そういう不意打ち的な文学案内としてすごい攻撃力が高いから、伝奇愛者は絶対に読むべき本だと思う。
 あと藤本タツキに超ハマってしまった。ファイアパンチが想像以上に面白くて、一切の悪意がないことばとしてジェネリック沙村広明という語が出てくるテイストだったな……。たぶん藤本タツキ自身はすごい生真面目な人で、やるべきと思ったことを突き詰めると物語上の破綻をきたすから、チェンソーマンでは気持ちに絞りを入れてるんだろうな。そう思うくらいにガチガチに身構えてるとこを垣間見せる遠未来SFだった。異形になってしまった主人公が神に祭り上げられ、宗教が形成されていっちゃう刹那を取り巻く高揚と、気持ち悪さ、それを利用する手に視線を馳せているのが妙に律儀。そこに加わる淡々と、拍子を外していきなり入れてくる冗談や台詞回し、長回し風だったり省略したりというアクションがとんでもなく滋味深い。ある意味では弐瓶勉の血も感じるし、読む度になんでアフタヌーンじゃなくてジャンプ系列でやってるんだろうみたいな気持ちになる。わたしとしては再生能力をもつ長命者、ゲスくて映画好きで嘘つきのトガタちゃんが死ぬほど好きで、もう読んでて心を引っ張られっぱなしだったな。ああいう人を描きたい、と感じ、こういう行動を読みたかった、と気持ちを締めくくってもらえるのは心地いい。チェンソーマンも見どころは多いし、心に新たな杭を打ち込んでくれるよう祈ってる。というかリアルタイムで進行してるジャンプ漫画にはじめてハマったの、はじめてだな……(小学生の頃から角川っ子だったから……)。
こないだサイバーパンク小説案内的なやつをメンテナンスした。何年か前の自分が妙に特徴的っぽい風情の文章を書いてると大変腹が立つのはなんでかしら。追加情報を少し入れるとともに文体を均した。
 Apr.30.2019
薄っすらかかわってる案件のプロットいじりにオーケーが出たので、資料を眺めつつ細かい処理をしたりしなかったりな昨今。一応いろいろやっている。平成が今日で終わりだし、せっかくだから自分が十五年くらいやってきたお話関係の振り返りとか、そういう個人サイトらしい独言でもダラダラやろうかと思ってたんだけど、現在(午前三時半)、時間があるとは微妙に言いがたい状況なのでやめておく。しかしあれですね。平成終盤戦にきて、長らく自分のなかでメインヒロイン像であった「りつこ」の総決算みたいな「リツ」という眼鏡っ子を描けたり、「墨洲ちゃん」という私的ご新規かわいい像を描けたり、絵描きさんとの共同作業で自分のなかに大きな区切りをつけられて楽しかったな、みたいな感慨は確たるもの。一緒に遊んでくれたさまざまな人たち、ありがとうございました。令和の代におかれましても引きつづきよろしく。そういう一連のやつだけを、なんとなしに書いておく。
 そして今日は町田康率いる汝わが民に非ズのライブに行ってくる。そんな日に雨っておまえ! 空にむかって中指を立て奉りまくり候。
 Apr.05.2019
お、およばれしたあんけんのしめきりとのたたかいが、ついにはじまってしまった……。新年度とか関係ないでございますねわたしには、と気楽に構えていたところに書けとうながすリマインダーでドッキリさせられてしまった。まあ焦ってもしゃーねーし、プロットも昨年時点でベースをたてていたから、形にできるよう適当にそこそこやっていくのみだけれども。それと並行してソロ案件も徐々に徐々に清書を進めてるし、順調といえば順調なのかな。つっても各方面に種を蒔きすぎだなこれは、と自分にちょっぴり呆れ気味でもあり、三兎追って自分のおいたトラバサミで足をがっちりみたいな図にならないように気をつけていきたいものですね(他人事)。
近頃ちょっと酒を飲むだけで脳が曖昧になりすぎるので禁酒しはじめた。知能指数が下がって、前よりもひどく頭が悪くなっている気がしてるのだけど、それに拍車がかかってるような。怖い。
買ったり。
 文庫版フリクリ上下/ウエダハジメ
 一生に一度の月/小松左京
 呪われた腕 ハーディ傑作選/トマス・ハーディー
 猥褻風俗辞典/宮武外骨
 買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて/山内マリコ
 魔物のためのニューヨーク案内/ムア・ラファティ
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