あとがき
 残念ながら、この子らは善い先行きを願ってはもらえないだろうな。
 と、よく思う。
 創作、ことひと目に触れがたい一次創作、そういうのからはさらに無縁な一・五次創作なる半端な枠組みでは、自然なことだろう。こうして書いた子らは往々にして、読んでくれる人の多くにとってすれば原典と比し、到底、興味をそそらないことであろう。そうした印象を上回る力をきちんと注ぎきれているともかぎらない。人物に善き結末があるように――真夜中ハ純血のようなオープンエンドの場合に――読み手(あなた)が祈ってくれたらいいが、そうなる確率は高くない。ひどいなきみは、という話だが、本当によくそう思うわけだ。
 では、という話。
 劇中に登場した子らを書き手(わたし)がわりあい気に入り、かつその子らの行き先に真っ当な決着がつくかわからない状態としてしまったら。それが心に棘となると、助けられるのは書き手(わたし)しかいない。このお話は、過度に移入してしまったくせ大切に描けてあげられているか怪しい、二人の永遠の小娘を救うために書かれた。いるべき場所にいさせてあげるために書かれた。いや、なにより自分の気持ちを安定させるためというべきか。
 設定の多くはBloodborne、そしてクトゥルフ神話に準拠、改竄し、ついでにDarksoulの影響下にもあるが、ポポロクロイス物語に久しぶりに触れたこともあって、原作よりはるかにのんびりして甘ったるい。この過度ともいえる甘さに、賢明なる読み手(あなた)は――もしかすると原作未プレイであってすら――お気づきだろう。ある種、本筋たる前回に対するDLCとして、ドリームランドを舞台にした時点で、そのように決定づけられていた。現世において多かれ少なかれ、孤絶をさだめられた子らが逃げる先なんて、他のどこにあろう。狩人の夢を持てぬもの、と藪から棒な設定をしたことも行き先を「向こう側」へ導いた。それに、「自分へのご褒美」というような振る舞いの軽々しさが、大事なものを遠ざけ、見えるものをくすませ、退屈に変えてしまう。この時点で罰は完結している、と書き手(わたし)は思っている。
 なので、描かれる世界そのもの、グスターフィアの扱いに関しては甘ったるすぎるほどに甘ったるい。
 安らかであるほど、そこに「不在」が悲しく思える――なんとなく、救いたさとともに、そんな「感じ」を書きたくて、斯様な状況設定となった。
 スタイルとしてはクラーカシュトンことクラーク・アシュトン・スミス、フリッツ・ライバーの二大御大(何だこの変な日本語)のそれを、部分的に借用した。不徳が祟って、二人の大物の足許にもおよぶことは叶わず、小説としてはいささかと言いきれないほどふつつかな部分が多いけれど、楽しんでいただけていたら幸いです。なにより、この子らに穏やかな日々があれと思っていただけたら、それはもう望外の幸せ。それによってこの子らをめぐる戦いは、自分のなか以外でも終りを迎えたことになる。
 また、今回もメグリム・ハルヨさんにお手伝いいただいた。可愛らしくしてしかたない再会を描いていただけて、作者としては嬉しいことこのうえないです。本当にありがとう。
 では、そんなこんなで。
 読んでくれてありがとう。またの機会があれば、是非、お目にかかれますよう。


 BGM:
 ALI PROJECT:「Deja Vu」、「薔薇架刑」
 Cocco:「きらきら」、「サングローズ」、「ブーゲンビリア」
 坂本真綾:「Lucy」
 柴草玲:「あじさい」、「うつせみソナタ」
 DAOKO:「ShibuyaK/さみしいかみさま」、「DAOKO」
 The Dresden Dolls:「The Dresden Dolls」
 hi-posi:「かなしいことなんかじゃない」
 Mouse on the keys:「Out of Body」
 moumoon:「LOVE before we DIE」
 ゆらゆら帝国:「つぎの夜へ」
 Lost in the Fog:「アインズヴァッハの墓」

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