わりと初読者にも優しい系 おすすめサイバーパンク小説リスト 「サイバーパンクとか、 どうでしょう。」 | ||||||||||
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目次 ■前書き。 ■第一部:小難しくないヤツを読もう。 ▼ペロー・ザ・キャット全仕事&ボーイソプラノ ▼鬼哭街 ▼オーギュメント・アルカディア ▼殺戮のマトリクスエッジ ▼ヴァーティゴ ▼イノセンス After The Long Goodbye ▼オイレンシュピーゲル&スプライトシュピーゲル ▼ニンジャスレイヤー ▼スズメバチの黄色 ▼楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選 ▼攻殻機動隊&キヌ六 ■第二部:翻訳モノも良いは良い。 ▼重力が衰えるとき ▼ハードワイヤード ▼ドローンランド ▼ネクサス ▼ニューロマンサー ▼クローム襲撃 ▼スノウ・クラッシュ ▼グローバルヘッド ■第三部:あるいはトばし気味のセレクト。 ▼軍事・諜報趣味 ▼探偵モノ趣味 ▼コア・オブ・コア ▼オルタナティヴ ■付記。
Netflixはドラマ版『オルタード・カーボン』を配信。『攻殻機動隊』は実写版が公開され、『S.A.C.』は最新作がCGアニメ化。インディーから大手までのゲーム会社が『Ruiner』、『VA-11 Hall-A』、『サイバーパンク2077』といった作品をリリース。シモン・ストーレンバーグによるイラスト集『エレクトリック・ステイト』が界隈を賑わせたのも記憶に新しいですね。そして、二〇二一年にいたっては『マトリックス レザレクションズ』の公開が決定。 再ブレイクから再定着にいたった昨今の情勢に、ジャンル愛好者としては一喜一憂が絶えません(いいこと)。一方、その礎となった小説作品に関しては、「何から読めばよかろうか」と悩む言と、それに対する良い感じな回答の不在がいまだに見受けられます。 もうすぐ四〇年選手のジャンルだし。 だいたいは中古じゃないと買えないし。 モノによっちゃプレミア付いて ちょっと引き気味の「ニューロマンサー難しくね?」とのことばももはやおなじみ。入り口と見せかけた代表作が セレクトは初読者でもつっかえないの中心で。 なるだけワクワクできるエンタメ系を。 ワクワクって大事でしょう? それに恰好良さも大事。 なかには個人的に、鬱陶しい言い方をするなら あ、でも値段爆あがりとかに関してはご容赦くださいませ。そういうのは古本屋を そんなこんなで前置きが長くなったけど、まあ、アレです。 気になったのがあれば読んでみてねよろしくね!
著者:吉川良太郎 出版社:徳間書店 出版年:2001年5月 電子書籍:有 ボーイソプラノ〈新装版〉 徳間SFコレクション 著者:吉川良太郎 出版社:徳間書店 出版年:2001年9月 電子書籍:有 オススメ度:★★★★★ 第三次非核大戦を経た近未来のフランスにおいて、暗黒街の巨魁パパ・フラノが取り仕切る黒い治外法権域<パレ・フラノ>を舞台とした、ポップな語りと軽妙なノワール/ハードボイルドが交錯するサイバーパンク長編小説。 第一作『ペロー・ザ・キャット全仕事』は、社畜の 自由を求めて遊んでたら暗黒街の首輪に囚われた「ぼく」の物語を、ピカレスクやスパイモノといった典型的サイバーパンク様式を織り交ぜつつ、大変スピーディに魅せてくれる作品です。一人称の回想からなる語り口は小洒落たユーモア感覚にあふれ、気軽な読み味をくれるのが大きな魅力のひとつ。言うなればサイバー版『吾輩は猫である』。というか「吾輩は猫になりたいのである」という趣。さらに突っこんで言うならば、そこにウィリアム・ギブスンの短編『記憶屋ジョニイ』を本歌取する感覚までもを持ちあわせ、スタイルのキメっぷりたるやデビュー作とは思えません。ファミリーが抱える「軍曹」にスパイ技術を叩きこまれ、エジプト秘密警察エージェント戦うなど、全編を通して冒険活劇らしいしなやかな勢いもたっぷり。国際謀略や背景に透ける「大戦後」としての世界のありようもクール。最後まで一気読みできる楽しい作りなので、手始めに読むにはぴったりな傑作と言えましょう。 第二作『ボーイ・ソプラノ』は、第一作で脇役だった眼帯姿の探偵ヴィッキーを主人公に据えたハードボイルド風アクション。聖歌歌手の少年から神父を捜してほしいと依頼されたことから、パレ・フラノの統治をあざ笑って跋扈する正体不明の殺人者<クトゥルフの呼び声>をめぐって闇に引きこまれる、というお話。 前作につづいて、やはり謀略がにおいたつ内容となっております。ただ、打って変わって元警官のおっさんが主人公で、ハードボイルドの大家=レイモンド・チャンドラーの様式を意図的に用いることもあり、テンションはいくらか抑えめ。サイバーパンク度合いもちょっと控えめです。モチーフ単位で言えば、どちらかといえば伝奇的な風情が強いでしょうか。ノリで言えば少しファウスト賞周辺の香りもほんのり。しかしながら、非常にオタクっぽいディテール群、およびゼロ年代的悪趣味ノリを隠し味として、吉川良太郎らしくなかなかにピリッとした魅せ所の多い作品です。 両作とも軽快な日本SFながら、作者が仏文趣味だからでしょう、言語感覚の各所にどこかフレンチなシニカルさや ちなみに番外編として『シガレット・ヴァルキリー』、『ギャングスターウォーカーズ』の二作品もあります。前者はシリーズを通して活躍するセクシーな職業的犯罪者にして女戦士、シモーヌを主人公とした冒険活劇。人工島<パサージュ・ド・リラダン>を舞台に、マフィアの殺人者と大激突します。針を一定方向に振り切り、国際謀略や組織犯罪がからむときのルパン三世のような面白みを、異能アクションとともに叩きつけてくれる作品です。パレ・フラノシリーズがお口にあえばこちらも是非どうぞ。後者は、同世界観における<魔都・上海>を舞台として、マフィアやギャングスタが異能アクションをやるお話。まあ、なんだ、良く言えばお話よりアイデア重視の作品です。ジャンルとしてはSFというよりも広義のSFとしての伝奇へと大いに接近しています。なんで……? 鬼哭街 (星海社文庫) 著者:虚淵玄 出版社:星海社 出版年:2013年10月 電子書籍:有(ただし角川スニーカー文庫版) オススメ度:★★★☆☆ ニトロプラスが二〇〇二年にリリースした一八禁ビジュアルノベルのノベライズ版。サイバネティクスの怪物がうろつく近未来の上海を舞台に、妹を嬲り殺しにされた 虚淵玄のギラついた(そしてごみごみした)文体が作品のテイストと非常にマッチしたハードボイルド・アヴェンジングなサイバーパンクです。と、言っても実際のとこ、それほどサイバーパンク色はそこまで強くありません。どちらかといえば、サイバーパンクを「便利なジャンル」として援用したエンタメ通俗SF、というのが正しいのかもしれません。お話の状況作りに、青光りするダークな色彩を援用している。ただし、だからといって生半可な作りになってるわけでもないのです。電磁発勁なる技をもって生身のままサイボーグに対抗できる男が、修羅の如き――というか修羅そのものとなり、マフィアの幹部を抹殺し、妹の魂が分割注入されたガイノイドを強奪していく。わかりやすい浪花節世界観を、刃で刺突するがごときまっすぐさで書いているのですね。 というかあれだ、言うなれば香港電影の世界。そこにこめられているのは 魂を砕くションボリな復讐劇や、激戦に次ぐ激戦は、現在のサイバーパンクメインストリームのひとつである『ニンジャスレイヤー』まで、そのまま直結できるもの。望むがままに突き進むダークな潰しあいが好きな人にもオススメです。延々と暴力描写に触れていたい人にもオススメ。 オーギュメント・アルカディア 著者:東出祐一郎 出版社:朝日新聞出版 出版年:2013年3月 電子書籍:無 オススメ度:★★☆☆☆ 日米露中の企業体が支配する日本のディストピア風都市を舞台に、私立探偵が謎の少女ディを守って大立ち回り、というお話。ディを守って追いつ追われつをした果てに、都市の中心軸を巡る戦いが露呈していく、とかまあそんな感じ。 一〇年代の作品らしく、サイバー描写においては あら、このご時世に書籍でそういうノリを……とちょっぴり微妙な気分になる、よく言えば昔気質のラノベっぽい部分もありますが、読み味そのものはかなりライトで陽気です。ジャンルへの入り口とするほか、気楽な作品を求めるとき、 殺戮のマトリクスエッジ (ガガガ文庫) 著者:桜井光 出版社:小学館 出版年:2013年11月 電子書籍:有 オススメ度:★★★☆☆ 電脳の「コマンド」でゆるやかに統制された海上都市トーキョー・ルルイエを舞台としたサイバー・アクション。都市に潜むメカ怪獣どもをただ一人で狩る少年(眼鏡っ子)が、正体不明の不思議ちゃんとの出会いにより電脳アカウントを狂わされ、さらには都市の暗部に巻きこまれていく――と、かなりわかりやすいお話。 『オーギュメント・アルカディア』につづき、ボーイ・ミーツ・ガールです。エロゲか? ノリはほぼエロゲです。両方も作者は元エロゲライターですしね。 TRPG『シャドウラン』などの世界観を大いに援用した風合いには、端的に言って目新しさこそないものの、ラノベらしいラノベとしてのスタイルに近くて読みやすいサイバーパンクといえばこれでしょう。続刊はビジュアルノベル的文体がさらに多用されることで、小説としての読み味がイマイチながら、第一巻はそこそこな内容となっております。カバーすべき要素は全部カバーしてあるので入門に最適。 ただ、読みやすいというのが、この作品では文章の薄さにつながってもいます。そこは好みが分かれるかも。サイバーパンクは往々にして、種々の あと未完のままブン投げになってるのがなにより難点です。完結しないまでも、せめてひと区切りはつけてほしいよね……。 ヴァーティゴ (幻狼ファンタジアノベルス) 著者:深見真 出版社:幻冬舎 出版年:2009年7月 電子書籍:有 オススメ度:★★☆☆☆ 近未来の日本を舞台に、サイバーボディのボインボインムチムチブリンブリン(当時三十代前半であった著者の性欲を煮つめたがごとく)なビアンねーちゃんが悪党をボコっていくサイバーパンク警察小説。治安が悪化の一途にある二〇三〇年の東京を舞台に、凶悪犯罪を追うSP上がり&軍隊上がりの女刑事 作者が筋肉/レズビアン/暴力を好むこともあって、ボインボインと人殺しに特化した小説にございます。特化しすぎ。特に性的な要素はおよそ通学/通勤電車――つまり公共の空間では読みがたい味わいとなっております。 ページ開いて即眼にはいるのがディープキスしてる挿絵だし! エッチなの?! エッチです……。 また、ボインボインな 作品傾向としては、全体的に攻殻機動隊のジュブナイル・ポルノ的パロディと言えばまとまりがいいでしょうか。かといってサイバーパンクとしての性質がヘボいかと言えば、もちろんそんなことはありません。清水建設の超高層建築ネタ、イメージ画像化技術(いわゆる脳機能イメージング)、サイボークの格闘におけるフィジカル云々などの要素もちゃんとフォロー。ちょいオッサン臭い性的描写(昔の暴力エンタメ小説めいたセックスやレイプ)と残酷描写が焼肉弁当めいて脂っこいですが、それらに耐性があればかなり楽しく読める、滋味深いB級サイバーパンクです。 イノセンス After The Long Goodbye (デュアル文庫) 著者:山田正紀 出版社:徳間書店 出版年:2005年9月 電子書籍:無 オススメ度:★★★☆☆ 劇場アニメ作品『イノセンス』の公開にあわせ、アニメージュ誌に連載された近未来ハードボイルド長編小説。『攻殻機動隊』のラストにおいて主人公・素子が去ってより幾年が過ぎ去った大都市を舞台に、孤独のなかにあるバトー(素子の相棒)が行方不明になった愛犬ガブを追い求め、街角をさまよう、というお話。 押井守による『攻殻機動隊』の続編にして、『イノセンス』との空白をつなぐ物語。と、言えなくもないし出版社も言い張っていますが、実際は山田御大が「押井守の攻殻機動隊」との枠組みを使って描いた二次創作というのが正確でしょう。「イノセンス前夜」を謳いつつも、つながりはモチーフを散りばめる程度です。作中世界の造形や、電脳の解釈もなかば山田オリジナル――それは必ずしも悪いことではありません。原典からいくらか脱臼するおかげで、小説単体で読むのが容易になっているのですから。相棒をネットの彼方へ見送ってしまった 人を選ぶのは文章のテンポに対する相性と、山田御大によるバトー像と内省がいささか湿っぽすぎるところでしょうか。こと後者は、他作品におけるバトー像が念頭にあると、こんなくよくよした内省をする人だっけ……と思うかもしれません。まあ、士郎正宗/押井守/神山健治/黄瀬和哉と語り手によってちょっとずつ違うから、なんとも言いがたい部分ではありますね。 オイレンシュピーゲル壱 Black & Red & White (角川スニーカー文庫) 著者:冲方丁 出版社:角川書店 出版年:2007年1月 電子書籍:有 スプライトシュピーゲルI Butterfly & Dragonfly & Honeybee (富士見ファンタジア文庫) 著者:冲方丁 出版社:富士見書房 出版年:2007年1月 電子書籍:有 オススメ度:★★★★★★★★★★ 国策にもとづいて機械化を施された少女たちが対テロの戦場に舞い踊る軍事・防諜サイバーパンクシリーズ。 少年兵の運用が合法化された近未来のオーストリアはウィーンを舞台に、身体障害やネグレクトによって人生を壊された女の子たちが、憲兵隊や公安警察、と巨大な組織のなかで未来を掴みなおすべくして奮闘し、イデオロギーの怪物やその裏に潜んだ武器商人を撃滅すべくひた走る、というお話。 正味、今現在のサイバーパンク――あるいは清潔な色彩と異質な文化、倫理によって形作られた異質な世界を舞台とするポスト・サイバーパンクとしては、最大級の火力と物量を有する作品です。萌え(というのは死語でしょうか)。 また、各作品、各巻でのお話の軸が、 ▼墜落した衛星を追う軍事アクション ▼『ダイハード2』めいた空港占拠事件 ▼洋ドラ『24』を意識したリアルタイムの対ウィルステロ活動 ▼ダルフール紛争の軍事法廷警護 と、かなり起伏に富んでいるのも印象的。 これらの話はどれも現実と地続きになった問題を、不誠実にならぬよう扱い、それでいてエンターテイメントとしても昇華できている。非常に小気味よい作りです。他方、ダーシやスラッシュなどの記号類、ルビを多用した特異な文体は好き嫌いがはっきり分かれるため、その点で「読みやすさ」は個々人に差異が出るかもしれません。 それらを込みにしても、愛/異形/防諜活動/軍事作戦が合体した、紛れもない傑作サイバーパンクとしてTHE傑作OF傑作であることは間違いないでしょう。筆者としては超オススメです(THE贔屓OF贔屓)。 ニンジャスレイヤー第1部 ネオサイタマ炎上1 著者:ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ 出版社:エンターブレイン 出版年:2012年9月 電子書籍:有 オススメ度:★★★★★ ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ……もとい、本兌有&杉ライカがニンジャ&畸形的ジャポネスクをフィーチャーして贈る大長編サイバーパンク。 あるいは、サイバーパンクといえば、と 舞台は鎖国状態の日本――大企業と腐敗した社会システムが人々の魂を抑圧する暗黒都市<ネオサイタマ>。そこにあってささやかな幸福を抱くサラリマンのフジキドが、ニンジャ抗争によって妻子を失い、みずからもまた死の淵に落とされたことで謎のニンジャソウル、ナラクに憑依される。憤怒と憎悪をそそのかすナラクの声に導かれ、フジキドの破滅的な復讐劇が動きだす、というお話。 もっとも、これは主人公をめぐるメインプロットにすぎません。シリーズ全体では時系列や視点が激しくシャッフルされ、ときに市井の人々、ときに善き心をもつニンジャの眼差しから語りあげる。短い ただ、見せかけに騙されるともらいが少ないのは世の常。本作は単なる スズメバチの黄色 著者:ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ 出版社:KADOKAWA 出版年:2019年6月 電子書籍:有 オススメ度:★★★★☆ 古典たる『ニューロマンサー』の<千葉市>から、近年においては『サイバーパンク2077』の<ナイトシティ>まで、楽しい作品には光と闇を併存させた都市空間がつきものです。本作は、それらに比肩しうる本邦の暗黒未来都市――<ネオサイタマ>の まず<ネオサイタマ>の語が、『ニンジャスレイヤー』の外伝たる一見さんお断りのハイコンテクスト性を想像させかねませんが、その実、きっちり単体で読めるように構成されているのが本作最大の美点です。ヤクザのパシリである火蛇くんが、敵対ヤクザに追われる少年を助けたのを契機として、ギャングスタへと成り上がっていく。このオーソドックスな筋を、本編に依存せずひと筋に語るわけですね。そのために各所が読みやすく 調整してなおケレン味に特化した語りに人を選ぶ部分はあるかもしれません。が、サイバーパンクの他にも 楽園追放 rewired サイバーパンクSF傑作選 (ハヤカワ文庫JA) 著者:V.A. 出版社:早川書房 出版年:2014年10月 電子書籍:無 オススメ度:★★★☆☆ CGアニメ『楽園追放』の公開に合わせて刊行された傑作選。 翻訳モノ慣れしている方は、ちょい本格的なのもいかがでしょうか。収録作は楽園追放のテイストにあわせた傾向/設定/シチュエーションのものをセレクト。特定傾向に寄ってはいるものの、サイバーパンク周辺の今昔をなんとなく追いかけるにはちょうどいいのです。 クローム襲撃/ウィリアム・ギブスン 間諜/ブルース・スターリング TR4989DA/ 神林長平 女性型精神構造保持者/大原まり子 パンツァーボーイ/ウォルター・ジョン・ウィリアムズ ロブスター/チャールズ・ストロス パンツァークラウンレイヴズ/吉上亮 常夏の夜/藤井太洋 入っているのは以上の八作品。 ギブスンの傑作短編『クローム襲撃』を筆頭に、スターリングの潜入モノやウィリアムズの冒険小説(こちらは第二部でも紹介しております)から、ストロスのハイテク世界、吉上亮のゼロ年代リアルフィクション風ライトノベル、さらには藤井太洋のテクノスリラー風ポスト・サイバーパンクまで、たっぷりと味わえる。前述したように楽園追放のために編まれたため、神林長平のあまりサイバーパンクとは関係ないお話なども入ってはいます。でも、物量はそこそこで定価はおよそ九百円――翻訳モノを経由して気軽にテイストを味わうためのコスパは良いですね。 攻殻機動隊(1) (ヤングマガジンコミックス) 著者:士郎正宗 出版社:講談社 出版年:1991年10月 電子書籍:有 キヌ六(1) (アフタヌーンコミックス) 著者:野村亮馬 出版社:講談社 出版年:2014年2月 電子書籍:有 読んで字を追っててもどんな感じかあんまり頭に湧かないとき、 莫迦かっけー絵面で脳内イメージを補ってくれる大傑作コミックもあるのはご存知ですよねご存じない人います!!!????! (唐突なレイアウト無視の大声)ご存知でないとすれば、この二作がマストです。 攻殻機動隊は、草薙素子率いる公安九課の防諜戦を描く金字塔。漫画としてはこれ以上のものを描きづらいというところまで突きつめた非常に上質なサイバーパンクです。純粋に日本を舞台として、無線式の つまりどういうことかというと、「サイバーパンクってこういうのがマジにカッケーすよね」という具体化がもう抜群な最強メディア。イメージを喚起するためのベースとするだけでなく、もう単純に読まいでかという一作です。 キヌ六もまた、同じ文脈の上にありますが、その出で立ちは攻殻と正反対のもの。攻殻が連作短編の重なりによる長編とすれば、キヌ六は長編ロードコミック。都市の 絵柄は前作『ベントラーベントラー』での、どちらかといえばニューウェーブ寄りなテイストから適度にかわいらしいものに。くっきりとした風合いで描かれる少女たちの心の交歓とライトな百合としての部分も、近来のSFファンには心地よいでしょう。 この二作品を読めば、本を読んでても模糊とした造形や風情への脳内補完がかなり効くはず。そういう理由で並べてみましたが、いやこれ単純に作品礼賛になってんな。まあいいか。 と、ひとまず入手難度が低めで読みやすいのはこんなとこ。 ここからサイバーパンクをキックを楽しんで、翻訳モノのサイバーパンク(それこそが鉱脈)に手を伸ばしていくのも善きではないかなと個人的には思います。
重力が衰えるとき (ハヤカワ文庫SF) 著者:ジョージ・アレック・エフィンジャー 訳:浅倉久志 出版社:早川書房 出版年:1989年9月 電子書籍:無 読解難度:★★☆☆☆(ちょいがっしりした翻訳調) 入手難度:★☆☆☆☆(新装版有) 欧米の凋落やら何やらで変転を迎えた時代のイスラーム世界を舞台とするハードボイルド風電脳探偵小説。大犯罪都市――ブーダイーンの黒社会で探偵役を引き受けている自称一匹狼が、依頼主が眼前で殺されるという事態を深堀りすべく黒社会を右往左往したり、自称ジェームズ・ボンドと戦わされたりする、というお話。 兎角、ことあるごとに披露されるイスラーム様式が独特な一作です。作品世界の各所を彩るのは家父長制度に基づく規範や、「やりとり」を重視することで定型化されたことばの数々。お話の筋こそチャンドラー風の典型的造作ながら、表皮を張り替えることでその そこに読みやすさを加味するのが、一人称によるどこかボンクラくさい語りです。主人公であるマリードは、腕っ節よりか、ノラクラした構えで歩くのが似合う手合。その辺が浅倉御大の訳と相まって、ストレートかつハードすぎない、ちょっととぼけた風情を生んでいます。 また、サイバー設定もそれほど込み入っておりません。メインとなるのは「モディー」という技術。端末化した脳にセットすると別人格や物語の登場人物をエミュレートできるこれを使い、きらびやかなネオンの奥を捜査していく。テイストとしては、第一部で紹介した『イノセンス After The Long Goodbye』に近いです。お話がスロースターター気味なのはそこそこ大きな弱点ですが、他の作品にはない空気感を投げかける佳作と言っていいでしょう。 ハードワイヤード〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) 著者:ウォルター・ジョン・ウィリアムズ 訳:酒井昭伸 出版社:早川書房 出版年:1989年4月 電子書籍:無 読解難度:★☆☆☆☆(ほぼラノベのライトな翻訳調) 入手難度:★★★☆☆(中古メイン) 最初にあった「文学的な運動」の相に興味はなく、ファッション性を楽しみたい。サブカルチャーにはそうした流れがつきもので、本作もそうした流れに乗った一作。SFらしいSFというよか、SFを衣とした大暴れを描く娯楽作です。そもそもはゼラズニイの『地獄のハイウェイ』が元ネタであると言えば、わかる人にはどことなくテイストが感じとれるのではないでしょうか。悪く言うなら、あくまでも『地獄のハイウェイ』的なお話をやるのが目的だから、サイバーパンクは香辛料でしかありません。ですが、それは翻って言えばエンタメノリをマジに重視しているということでもあります。 つまり、滅法読みやすい。 翻訳モノサイバーパンクにおいては唯一無二と言えようレベルで現代文学的な部分を削ぎ落とし、兎に角、 ドローンランド 著者:トム・ヒレンブラント 訳:赤坂桃子 出版社:河出書房新社 出版年:2016年1月 電子書籍:無 読解難度:★☆☆☆☆(軽めの翻訳調) 入手難度:★☆☆☆☆(中古価格低め) 無数のドローンによる監視体制でディストピアとなったEUを舞台とするミステリ風ポスト・サイバーパンク小説。 あらすじだけだと硬派っぽい雰囲気ですが、まずもって主人公は、ハードボイルドになりたいけどなりきれない とはいえ、本筋はきちっと面白いSFミステリ。いびつな社会構造を通して考えさせる社会派の面はあっても、重い空気には終始しません。監視社会の穴に生じた事件を追求する捜査パートは、お仕事モノとしての抑制が利きつつも牽引力が強いのです。厖大なデータから犯行現場を電子上で再構成する「ミラーリング」などを用い、あるときは捜査スパコン<テリー>にブチキレ、またあるときは情報を組みあわせ、たまに分析官のヒロインといちゃつく――各所に賑々しさが散りばめられ、読み心地が地味になりすぎないのも善きですね。一方で、急激にテンションをあげてブチかますアクションもまた恰好良かったりして。<テリー>との連携で敵戦力を即座に分析し、おぞましい殺傷性火器にテキパキと対応を講じるシーンはサイバー銃撃戦が好きな人ならキャッキャしてしまうはず。 ミステリ畑とSF畑のミックスはたまに大変な良作を生みますが、これはとりわけ良い例ではないでしょうか。サイバーパンク小説だとの共通認識がないのかオススメに挙がりづらい本ですが、翻訳物のなかでは特にマジ超オススメ。最高。下手に『ニューロマンサー』から読まず、まずこれに触れたほうがいい、と言っても全然過言となりません。刊行から数年を経てるおかげで古本はバンバン出回っており、入手しやすいのも良し。いや個人的には文庫化してほしいんですけどね……(買い直したいしヒレンブラントにお金落としたい……)。 ネクサス(上) (ハヤカワ文庫SF) 著者:ラメズ・ナム 訳:中原尚哉 出版社:早川書房 出版年:2017年9月 電子書籍:有 読解難度:★☆☆☆☆(軽めの翻訳) 入手難度:★★☆☆☆(上下巻て高価いよね) 神経科学によって ナノマシンにより脳を端末化し、身体の各機能を御する――神経学的ハイテクが浸透しつつある世界は、グレッグ・イーガンらの九〇年代作家を経由して、日本では伊藤計劃に通ずる当世風の趣ですね。かといって生真面目一辺倒にせずアクション満載なのがまた当世風と言えましょう。ナイーヴなあんちゃんがスパイ活動を強制され、あがき、成長し、出会った人々ともに生き残ろうとする。そこにタイ王国の熱気や仏教的世界観というエキゾチックな衣を着付けて描かれる戦いは、かなり映像的で読みやすい。しかも意外に多いのが暴力要素。お話が大きく転がるときには格闘と銃撃が吹き荒れ、ハリウッド製アクション映画の作法がにおいたつのです。具体的に言えば『ボーン・アイデンティティー』からはじまる一連のシリーズぽさが色濃いですね。それを色とりどりのガジェットが彩り、感情制御アプリの「明鏡止水パッケージ」や自動格闘術アプリ「ブルース・リー」にはじまり、ヒロインである捜査官を内側から強化するハイテク技術、フル装備の特殊部隊や暗殺ドローンなど、各所でサイバーパンク冒険小説たる味わいを高めてくれます。 もちろん、善い味わいはエンタメ要素だけではありません。倫理面で諸刃の剣となるテクノロジーへの問いかけと、それをなお信じる理想。サイバーパンクらしい個人vs体制、そしてイデオロギーの対立。アメリカを規制に導いたトランスヒューマン技術悪用の悲劇。テクノロジーと仏教とが交錯する宗教体験。米中間のスパイ戦争を幹として、鮮やかなサイエンス・フィクションの葉が触れやすい形で茂っている。 惜しむらくは、三部作ながら第一部である本作の刊行以降は音沙汰がないことでしょうか。フィリップ・K・ディック賞を受賞した「Apex」を読める日は来るのかな……。来ないか……。 ニューロマンサー (ハヤカワ文庫SF) 著者:ウィリアム・ギブスン 訳:黒丸尚 出版社:早川書房 出版年:1986年7月 電子書籍:有 読解難度:★★★★★(翻訳文体の癖非常に強し) 入手難度:★☆☆☆☆(新装版・電書有) でおったな、原初にして最大の極悪ハードコア本! ちょっとした粗相から電脳世界を駈けるカウボーイとしての 言うまでもなく、サイバーパンク最大の そしてまた、その文芸としての質は比類がありません。世界の像に幻視を重ねあわせる詩性に富んだ筆致は、ウィリアム・バロウズやJ・G・バラードといった お話の筋も、実はダウナーなピカレスク青春小説として楽しいのです。若く繊細なアウトローたちが、サイバー犯罪に手を染め、命や 訳出から三五年。多くのフォロワーを生んでも、まだ摩滅してはいない。どれだけ手垢がついたところで、本当の珠は、拭いさえすればいまだ清冽な艶を宿している――それを教えてくれる傑作なのです。と、良き本であるといくら語ったところで、いざ文面と睨みあうと、油断したら筋を追うのも困難に感じてしまう本であることは、やはり否定できませんね。 毒を食らわば皿まで。難しいかもだけど、どうせ読むなら古典もきちっと楽しみたいぜ、とお思いの方に幸いなのは、以下の本を読めば読解難度がかなり下がるとの事実です。 【増補改訂版】ウィリアム・ギブスン (現代作家ガイド 3) 編著:巽孝之・新島進 出版社:彩流社 出版年:2015年6月 電子書籍:無 こちらの本には劇中設定解説、全作品のあらすじが詳細に記されているのです。アシストとして併読すれば、どうにか通読には困らないでしょう。他にも書評やギブスンによるエッセイ、レアい短編が収められ、ギブスンを理解する上でもかなり役に立ってくれるはずです。サイバーパンクの基本を理解していくうえでも、これ以上ないお役立ち要素のかたまりと言っていいかもしれませんね。 あとはミもフタもな話ですが、近来はウィキペディアの当該作品項目が非常に充実しています。あらすじとかもきれいに要約されているので、まあ、懐の寂しい人にも優しいですね。攻略本として参照してはいかがでしょうか。 クローム襲撃 (ハヤカワ文庫SF) 著者:ウィリアム・ギブスン 訳:黒丸尚、浅倉久志、酒井昭伸、小川隆 出版社:早川書房 出版年:1987年5月 電子書籍:有 読解難度:★★★☆☆(部分的に翻訳文体の癖強し) 入手難度:★☆☆☆☆(新装版・電書有) 電脳青春ピカレスクとしてシンプル楽しい『記憶屋ジョニイ』や『クローム襲撃』など、『ニューロマンサー』の前日譚を収めた傑作短篇集。こと、ニューロマのヒロインであるモリイが登場する『記憶屋ジョニイ』は、人物のラブリーさあり、バトル要素あり、都市探検要素あり、忍殺的にアレな日本要素もあり、と短いなかに楽しさがギュッとつまっています。加えて、サイバーパンクのジャンル枠に縛られることのない『辺境』とかもやたらカッコよかったり。小品の連なりとしての心地よさがすごいのですよ。 ちなみに字詰めや級数の関係上、紙面のキマり具合は旧版のほうが上だったりします。一方、新装版はトールサイズとなったおかげで読みやすさが段違い。 スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) 著者:ニール・スティーヴンスン 訳:日暮雅通 出版社:早川書房 出版年:2001年4月 電子書籍:有 読解難度:★★☆☆☆(ちょい硬めの翻訳調) 入手難度:★☆☆☆☆(新版&電書刊行!) 国土をフランチャイズ国家によって分割された近未来のアメリカを舞台に、仮想空間「メタヴァース」の大物、黒人剣士ハッカー(?!)のヒロ・プロタゴニストが新種のデジタルドラッグを巡って大活躍したりしなかったりするポップ冒険小説。 基本は九〇年代チックなアウトロー青春小説のスタイルに則っるものの、先見性とポップ性にあふれる作風は、いま読んでも眼をみはらざるを得ません。九二年の時点でメタヴァース(セカンドライフなどに強いインスピレーションをあたえたと言われています)を描きだすイマジネーション。新種のドラッグ「スノウ・クラッシュ」がらみの大事件。それらがお話を導き、さまざまな人々の視点があっちへこっちへと飛んだり跳ねたりする楽しさ。そして、同時代の作家で言えばチャック・パラニューク(代表作:ファイトクラブ)やアーヴィン・ウェルシュ(代表作:トレイン・スポッティング)と近いところにあるポップ・センス。どれもがうまいことからみあっています。 ハードSFとしての面を兼ね備えており、半端ないクール・ボーイ、と呼んでも過言とはならないでしょう。ちょっと勢いつけすぎてカッ飛ばすあまり、調子っ外れになる部分もありますが、気が合えば大変楽しい上下巻です。また、文庫版は鶴巻和哉(フリクリ/トップをねらえ2/新劇エヴァ監督)による表紙絵もめちゃくちゃラブリー。ビビッドなイエローとピンクの、モロにモロな九〇年代末感にはときめいちゃう。 あとはダイヤモンド・エイジも電子書籍化されました。こっちもポスト・サイバーパンクの最高峰のひとつなのでマストです。 グローバルヘッド 著者:ブルース・スターリング 訳:嶋田洋一 出版社:ジャストシステム 出版年:1997年7月 電子書籍:無 読解難度:★★☆☆☆(軽めの翻訳調) 入手難度:★★★★☆(中古メイン) 八〇年代サイバーパンク運動の大ボスによる、サイバーパンク以降のイマジネーションを拡張する短篇集。長編『スキズマトリックス(八五年)』の時期から、エッセイ『80年代サイバーパンク終結宣言(九一年)』前後までの各種短編を収録。 傑作長編の『スキズマトリックス』をはじめとして、ほとんどの作品がとっつきにくいスターリングですが、本作は比較的お手軽な内容です。というのも、のびのびした雰囲気のアイデアSFがたくさん入っているが故。変な設定がマジで多い。サイバーパンク方面の視点で注目すべきは、『われらが神経チェルノブイリ』と『あわれみ深くデジタルなる』でしょう。前者は、遺伝子ハッキングによる知能向上ウィルスが大規模災害を起こし、大変な変化に見舞われてしまった世界を架空書評から描きだす短編。後者は、イスラーム社会で生みだされたAIが演説でアッラーへの信仰を滔々と語りあげる短編。と、簡単なあらすじだけだと一瞬マジメっぽく身構えかねませんが、二作ともテッキーな楽しさですっ飛ばし、良い具合に気の抜ける膝カックンをかましてくれる良作です。 ギブスンと並んでサイバーパンク運動の中心たる作家ながら、ともすればサイバーパンクにつきまといかねない偏見の皮をむき、境界を飛び越えていく作風は素敵です。他の短編にしても、奇妙な味から伝奇的かつジョークめいた小ネタ、ちょっとジャーナリスティックな視線の話、果ては現代文学っぽいのまで幅広くフォローしており、楽しくノンビリ読めること間違いなし。
▼軍事・諜報趣味(特殊部隊や諜報活動、捜査活動を描く) ペロー・ザ・キャット全仕事/吉川良太郎 イノセンス After The Long Goodbye/山田正紀 ヴァーティゴ/深見真 虐殺器官/伊藤計劃 ドローンランド/トム・ヒレンブラント シュピーゲル・シリーズ/冲方丁 ハーモニー/伊藤計劃 ネクサス/ラメズ・ナム ネットの中の島々/ブルース・スターリング ▼探偵モノ趣味(探偵役がウロウロする) ペロー・ザ・キャット全仕事/吉川良太郎 ボーイソプラノ/吉川良太郎 重力が衰えるとき/ジョージ・アレック・エフィンジャー オルタード・カーボン/リチャード・モーガン ▼コア・オブ・コア(原点寄りの濃いの) ミラーシェード-サイバーパンク・アンソロジー ニューロマンサー/ウィリアム・ギブスン クローム襲撃/ウィリアム・ギブスン カウント・ゼロ/ウィリアム・ギブスン モナリザ・オーヴァドライヴ/ウィリアム・ギブスン スキズマトリックス/ブルース・スターリング ホーリー・ファイアー/ブルース・スターリング スノウ・クラッシュ/ニール・スティーヴンスン ダイヤモンド・エイジ/ニール・スティーヴンスン アッチェレランド/チャールズ・ストロス ▼オルタナティヴ(尖ってたり異ジャンルをミックス) バレエ・メカニック/津原泰水 ディファレンス・エンジン/ウィリアム・ギブスン グローバルヘッド/ブルース・スターリング 赤い星/高野史緒 ヴァスラフ/高野史緒 サイバーパンクとは概してピカレスク/探偵/スパイ/軍事と相性が良いものです。それはニューロマの時点からずっとそう。というわけで、それを意識したスタンダード寄りのセレクトから、ちょっと特殊な設定の本までを並べてみました。セレクト内容に関する異論は大いに認める(ノリで選んだから)。 伊藤計劃は「ゼロ年代SFの人」と大きなくくりに入れられがちですが、作風で言えば、サイバーパンク/ポスト・サイバーパンクからの影響がかなり顕著な作家です。なにせスターリング好きを公言し、使っていた文は黒丸尚の様式を継いだもの。作品内において、ポップなサイエンス・トピックによる 高野文緒はなかなかとんでもないオルタナ趣味と表現するほかない作品を発表しておりますね。非現代〜未来を、つまり一九世紀ヨーロッパなどを舞台として異化された世界を描く。作品で言えば、ハッカーネタを一九世紀フランスに持ちこんだ『カントアンジェリコ』や、帝政ロシアに支配された江戸(?!)でハッカー町娘(!!?!)が冒険を繰り広げる『赤い星』が二大どうにかしてる案件。ちなみに『ヴァスラフ』は
同じく冲方丁の手による『シュピーゲル』シリーズを含めるのは、かの作品よりもテクノロジーの浸透度や取り扱いかたが、もう一歩だけ先に踏みこんでいる、との判断からです。そこをご理解いただけると幸い至極。古橋秀之による『ブラックロッド』からはじまるケイオスヘキサ三部作にしても、サイバーパンクの方法論を援用した超伝奇なので除外してあります。 似たものはあくまでも似たものに過ぎない、ということで、ひとつ。ほら、アレじゃん。中国料理やら台湾料理やら韓国料理やらのアジア料理って、それぞれが影響しあってはいるけども、基本、別の料理じゃん。そういう話。適当すぎると「サイバーパンクというくくり」のガイドである必要が失せちゃいますしね。 では、くっだんねェ御託は脇に投げやって。 このページが、サイバーパンクへの善き 記述:二〇一五年 / 加筆:二〇一九年五月 / 再加筆:二〇二一年九月 | ||||||||||
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