List of the Dead.
文章でゾンビに触れたいという奇特な人のためのゾンビ小説リスト。
 バイオハザードローズブランク――愛沢匡/メディアワークス
 BIO HAZARD 北海の妖獣――朝倉究/集英社
 屍美女軍団――朝松健/勁文社
 屍者の帝国――伊藤計劃×円城塔/河出書房新社
 妹がゾンビなんですけど!――伊東ちはや/PHP研究所
 ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない1――裏地ろくろ/フロンティアワークス
 パンドラの少女――M・R・ケアリー/東京創元社
 オブ・ザ・デッド・マニアックス――大樹連司/小学館
 高慢と偏見とゾンビ――ジェイムズ・オースティンxセス・グレアム=スミス/二見書房
 ステーシーズ 少女再殺全談――大槻ケンヂ/角川書店
 ゾンビ日記――押井守/角川春樹事務所
 ゾンビ日記2 死の舞踏――押井守/角川春樹事務所
 屍鬼――小野不由美/新潮社
 ジャクソンヴィルの闇――ブリジット・オベール/早川書房
 ウォーキング・デッド-ガバナーの誕生――ロバート・カークマンxジェイ・ボナンジンガ/角川書店
 死霊大名 くノ一秘録(シリーズ)――風野真知雄/文藝春秋
 ライフ・オブザリビングデッド(短編)――片瀬二郎/「NOVA10」収録/河出書房新社
 あやかし同心 死霊狩り――加納一朗/ワンツーマガジン社
 死者の夜明け-ドーン・オブ・ザ・デッド――ジェイムズ・ガン/竹書房
 エイリアン魔獣境――菊地秀行/朝日ソノラマ
 幕末屍軍団――菊地秀行/講談社
 魔界行――菊地秀行/祥伝社
 魔剣士 妖太閤編――菊地秀行/新潮社
 死霊列車――北上秋彦/角川書店
 交錯都市――黒史郎/一迅社
 ラブ@メール――黒史郎/光文社
 ジャンク(短編)――小林泰三/「肉食屋敷」収録/角川書店
 セル――スティーブン・キング/新潮社
 東京ゾンビ――花くまゆうさくx佐藤佐吉/竹書房
 凶鳥フッケバイン――佐藤大輔/角川書店
 緑の瞳――ルーシャス・シェパード/早川書房
 最後のクラス写真(短編)――ダン・シモンズ/「夜更けのエントロピー」収録/河出書房新社
 不死症――周木律/実業之日本社
 感染×少女――囚人/SBクリエイティブ
 最後の言い訳(短編)――曽根圭介/「熱帯夜」収録/角川書店
 丸ノ内 OF THE DEAD――ぞんちょ/集英社
 斬られて、ちょんまげ-新選組!!! 幕末ぞんび――高橋由太/双葉社
 屍者の定食(短編)――田中啓文/「イルカは笑う」収録/河出書房新社
 神州魔法陣――都筑道夫/富士見書房
 地獄の釜開き(短編)――友成純一/「狂鬼降臨」収録/出版芸術社
 ゾンビ・デーモン(短編)――友成純一/「ゴースト・ハンターズ」収録/中央公論新社
 玉川区役所 OF THE DEAD――永菜葉一x塔井青/富士見書房
 ウェットワーク――フィリップ・ナットマン/文藝春秋
 モスクワのモルグにおける死せるアメリクァ人(短編)――キム・ニューマン/「999-妖女たち」収録/東京創元社
 吸血ゾンビ 悪夢のゾンビ&バンパイア――ジョン・バーク/朝日ソノラマ
 コンテクスト・オブ・ザ・デッド――羽田圭介/講談社
 アキバタリアン 千の屍、夏、終わりの#――浜崎達也/講談社
 キッド・ザ・ラビット ナイト・オブ・ザ・ホッピング・デッド――東山彰良/双葉社
 関ヶ原幻魔帖――火坂雅志/勁文社
 鋼鉄の黙示録――チャーリー・ヒューマン/東京創元社
 死霊狩り――平井和正/角川春樹事務所
 ぼくのゾンビライフ――S.G.ブラウン/太田出版
 ワールドウォーZ――マックス・ブルックス/文藝春秋
 ゾンビ・ハンター アシュリー・パーカー――ダナ・フレズディ/竹書房文庫
 バイオハザード(ゲーム版ノベライズ)――S.D.ペリー/中央公論社
 かみつき――松久淳x田中渉/扶桑社
 ウォーム・ボディーズ ゾンビRの物語――アイザック・マリオン/小学館
 死んだ女は歩かない――牧野修/幻冬舎
 バイオハザード(映画版ノベライズ)――牧野修/角川書店
 バイオハザードアンブレラクロニクルズ(ゲーム版ノベライズ)――牧野修/角川書店
 ナイト・ボート――ロバート・R・マキャモン/角川書店
 奥ノ細道オブザデッド――森晶麿/PHP研究所
 生ける屍の死――山口雅也/東京創元社
 ナース――山田正紀/角川春樹事務
 バタリアン――ジョン・ラッソ/講談社
 死霊のえじき――ジョージ・A・ロメロ/講談社
 ゾンビ――ジョージ・A・ロメロ&スザンナ・スパロウ/ABC出版
 死霊たちの宴(上・下)――アンソロジー/東京創元社
 屍者の行進――アンソロジー/廣済堂
 アイアムアヒーロー THE NOVEL: ビッグ コミックス――アンソロジー/小学館
 ナイトランド第6号――「特集ZOMBIES!(短編収録)」/トライデント・ハウス
関連(してるようなしてないような)書籍
 ゾンビ映画大事典――伊東美和/洋泉社
 キツツキと雨――沖田修一/角川書店
 ぼくの映画。 学園一の美少女をヒロインにキャスティングしてゾンビ映画を撮ろう――金子跳祥/KADOKAWA
 ゾンビの作法――ジョン・オースティン/大田出版
 ゾンビーズ?ゾンビーズ! テキサスゾンビーズ ゲームノベル――友野詳/新紀元社
 ゾンビ襲来 国際政治理論で、その日に備える――ダニエル・ドレズナー/白水社
 ゾンビ・サーガ ジョージ・A・ロメロの黙示録――野原祐吉/ABC出版
 ボビー・コンロイ 死者の国より帰る――ジョー・ヒル/「20世紀の幽霊たち」収録/小学館

 近頃はご当地アメリカにおけるゾンビムーブメントが過熱して対ゾンビ弾薬やツールキットが発売され、日本でも学園黙示録HOTDが人気を博していますが(だいたい2013年前後の話)、一方で、今に至るまでに出た小説の数ときたら非常に少ないですなー。
 パッと見で相応に刊行されてるように見えても、新旧揃えても上記の通りゆえ、ちょいと寂しいといわざるをえません。同じく現世に在るため人に依存し、人の似姿をとる怪物――吸血鬼と並べても、フォトジェニックな気配が欠けているのが原因なのかしら、大きく差がついてます。ココらへんは恐らく、「キャラクターとしてのゾンビ」の扱いづらさが影響しているのでしょうな。ゾンビはどちらかといえばキャラクターという小状況よりか、災害としての大状況としての描出に向いている、というか。
 その点を考慮すると、人物や怪物として魅力的な吸血鬼は、翻訳物/ラノベ/一般文芸とフィールドを選ばず、幅広く、何百冊と出てるのでかないやしませぬ。
 もう地盤からして違うというか。
 吸血鬼は古くから概念として世界各国にあり、早すぎた埋葬のモチーフであり、狼人間ともクロスしつつ、十九世紀末にブラム・ストーカーの手でモチーフとして、きっちり形成され、陳腐になりながらも深く根付いた。そしておぞましさと同時に、耽美的モチーフ、ある種の美しさも同居させるようになった。
 かたやゾンビは、アフリカ神話におけるンザンビから始まり、ブードゥの肉奴隷(字面がひどい)へと遷移。そこから「地球最後の男」にて病原性の吸血鬼を経由、現在形を取ったのは一九六〇年代のこと。ビジュアルはひどい顔色をしてたり、腐敗していたり、虫がたかってたり、手足がもげてたり、と基本的にばっちい。さらに、単一固体ではなく、集団性のある怪物であるという点がこれまた色彩を分散させている――実際は、そこもまた怖い点でもあるのですが。
 まあ、そういうことも手伝ってか手伝ってないのか(適当)、なかなか語りづらいらしくて、現状のようになっております。
 もっとも、このリストがフォローできてない小説もまだ埋もれているはずなので、少ない少ないともいっていられませぬ。その事実を棚上げしつつ、まあ、フォローできないところはさておきましょう(情報お待ちしております)。
 ちなみにリストに挙げる上で、「ゾンビ」を規定する際にはだいたいロメロ型/スプリンター型/その他一般的亜種に当てはまるような行動の数々が基準となってます。「屍者の帝国」なんかは、内容こそフランケンシュタインモンスター物ではあるものの、死者の蘇生、ブードゥ系の運用、ということで類似系として含めております。「あるゾンビ少女の受難」もわりと同じようなノリでリスト入りしております。あと未読で、書評や報告をソースとしてリストに含んでいるものもいくつかあります。
 その点で間違いがありましたら、ご指摘いただければ幸い至極。
 また、当リストにおいては絶版となっている作品も多数含有しております。入手がちょい難しいものもあると思いますが、大半はAmazonのマーケットプレイスやブックオフ、その他古書店で入手できるのではないかと思います。
 気になる人は根気よく探して。わりと見つかる。
 さてさて、この中でも特に読むべきものの内容についてちょっぴし解説を加えときましょう。まずは当リスト内でもかなりロメロってる「ゾンビ」、「ワールドウォーZ」、「オブザデッド・マニアックス」の三冊。

「ゾンビ」
著者:ジョージ・A・ロメロ&スザンナ・スパロウ
ABC出版刊 1994年発売 価格:1,613円
 ロメロってるというかコレに関してはロメロのアレです。
 言わずもがな、現代ゾンビの祖であるゾンビサーガ三部作のなかでもっとも有名な「ゾンビ」(1979年公開)のノベライズ。
 内容としては、原文が良い悪いとか以前、読むに耐えない、直訳でガッチガチの文章が特徴。文章でゾンビを描ききれているかといえば、正味のところシーンの羅列に過ぎません。こういうのを読むとゾンビという作品は映像作品としての完成度が高いんだなぁ、とか思うのですが、しかし腐っても(ゾンビだけに)ノベライズ。ディテールは詰めてあって、映画上では説明不足により消化不良のシーンも腑に落ちます。わかりやすいところでは、序盤におけるスワットがアパートに突入するシーンの因果関係。この面を考慮すると、映画作品の副読本としては必須かな、と思える本です。
 いやもーホントに読みづらいんだけど。


「ワールドウォーZ」
著者:マックス・ブルックス
文藝春秋刊 2010年発売 価格:2,100円/文庫上:690円、下:720円
 中国の奥地で発生した熱病――全世界単位への拡散で生じ、容赦ない密度と物量で繰り広げられたゾンビ大戦を継ぎはぎするドキュメンタリー形式小説。かつてない精度のゾンビ小説であり、恐らくゾンビという「状況」を最大限、適切に扱った本です。  人がいかに生き延びてきたか。
 どうやってゾンビと戦ってきたか。
 なぜいまなお戦い続けているか。
 なにを失い、なにを手に入れてきたか。
 数十人に及ぶ人々の発言、エピソードが集積されることで、人類が強いられた戦いの構図を詳らかにしていく、という内容です。とある民間人から自警団、軍人、引きこもり青年、スパイ、流浪するSAMURAIな老人、と生き残った人々の紡ぎだす年代記的ともいえる超大作。言ってしまえば生存者たちの証言を扱っているため、恐ろしい結末とか、死の運命は書き記されてはいません。しかし、そこで描かれているのは圧倒的な彼我戦力差のもとに繰り広げられてきたヒストリーであり、破滅の瀬戸際まで圧倒されかけた記憶、傷跡を語っていく過程は、読んでいて手に汗握るなどという次元の話ではありません。
 そして、この本のなにが燃えるかといえば、外挿法的なスタイルで生成される未来――戦いのすえに生み出された技術や文化、世界の姿。SF的性質すら秘めたやり方であり、これ以上のゾンビ小説は望むべくもないでしょうな!
 しかもロメロゾンビだけじゃなく、潜水艦乗りのエピソードではサンゲリア的なゾンビも出てきたりしまして、もうボンクラ必携。
 映画版に関しては、まあ、なかったコトにしときやしょうや。

「オブザデッド・マニアックス」
著者:大樹連司
小学館刊 2011年発売 価格:630円
 ボンクラ少年がゾンビ禍に巻き込まれ、面目躍如とばかりの小躍りと怯えを抱えながら冒険へと投げこまれる話。表紙やノリから中身を測ると一見ハズした風情です。そのくせ、実はなかなかないくらいロメロゾンビの構成を踏襲した小説だったりします。
 ゾンビのお約束とその類の小ネタを無数に散りばめたスタイル。主人公は筋肉少女帯のゾンビをテーマとした楽曲「再殺部隊」を聞き、薀蓄を披露する。ザック・スナイダーによるドーン・オブ・ザ・デッドよろしく、そこまで好きでも拘泥するほどでもないけれど、丁寧にはまとめたという印象が強い一冊です。ただ劇中で描かれる軽度のスクールカーストが嫌な味わいを含ませ、そのレイヤーを嫌悪する人間の嫌らしさもまた香っているのがよいのですな。ヒロインがあんまりにも甘やかされ続ける結末に疑問は残りますが、なかなか楽しい一冊ではあります。

 エンタメに徹してる作品では「凶鳥フッケバイン」、「ウェットワーク」、「死霊列車」あたりが非常によくできております。
「凶鳥フッケバイン」
著者:佐藤大輔
角川書店刊 2003年発売 価格:620円
 遅筆と熱いおはなしでお馴染み、佐藤大輔の冒険小説風ゾンビ小説。第二次世界大戦中を舞台に、男前極まるナチの将校が謎の航空機を回収に向かった先で惨劇へと巻き込まれるというものです。序盤は明らかにいつもどおり、軍事冒険小説の筆致なのですが、途中からゾンビとの交戦状態を強いられ、という不思議な代物です。
 冒険小説の「鷲は舞い降りた」を中学二年生レベルに引きおろし、重火器や戦車や謎の飛行物体も出したごった煮にしたというと分かりやすいかもしれません。いや、なにをどうしたらそうなる……。一見して子供が書いたように破綻し、あるいはひどく退屈な話になりかねないのを佐藤一流のリーダビリティで補ってるのが魅力的な一冊です。正味、狭い範囲で延々と攻防戦を描いているだけなのですが、それが非常にアツい話になっています。あと解説が樋口真嗣で、そこ含めて謎な組み合わせ。ちなみにハードカバー版のタイトルは鏖殺のフッケバイン。こっちのがかっこよくね?

「ウェットワーク」
著者:フィリップ・ナットマン
文藝春秋刊 2000年発売 価格:730円
 ゾンビ×アクション÷ロードノベル、とこれまた不思議な組み合わせの一冊。
 タイトルが指す濡れ仕事(ウェットワーク)という婉曲表現が指すとおり、主人公はCIAエージェント。彗星が降った日を境に、ゾンビ禍に落ちて世界。そのなか、同業者の裏切りを食らって死んだCIAエージェントが蘇り、復讐に奔走する、という冒険小説風味なのですな。
 九〇年代スプラッタパンクの落とし子なんですが、まあスプラッタパンクが流行らなかったので徒花ともいえましょう。彗星が降り注いだのちに、というのは名作SF「トリフィド時代」へのオマージュなのかしら。主軸となるのは、ひとりの警官/ひとりのスパイ。このふたりを軸として、生き残った人間、生前の記憶を有して思慮するゾンビとの戦いを描くのですな。お話としては冗漫な部分もあるのですが、安全地帯を探す長い道程(ツーリング)、裏切り者を探し求める長い追跡(トレイル)は楽しいのです。こと終盤におけるナイフコンバットは、ゾンビコップ的な燃えというかなんというか。激燃え。
 ちなみに著者のフィリップ・ナットマンはこれを上梓する前に、ゾンビアンソロジー「死霊たちの宴(後述)」に短編小説「始末屋(後述)」を寄稿しており、本作はそれを原型とした長編になります。正直短編のほうは目も当てられないデキだったり。

「死霊列車」
著者:北上秋彦
角川書店刊 2008年発売 価格:780円
 感染者タイプとの戦いを描いた作品で、わかりやすい28日後オマージュ。突っ走るタイプとの攻防なので、ゾンビ小説のなかでも一層に激しいのです。中味は鉄オタの少年や陸自特殊作戦群オペレーターが、汚染された本土から脱出するために電車を駆り、封鎖が目前に迫る青函トンネルの突破を目指す、というもの。
 メインプロットはタイムリミットもので、同時にロードノベルの味わいも少々。とにかく北へ北へと向かう人々の戦いでページを引かせる感じの小説です。異変の始まり、陸上自衛隊特殊作戦群による救出作戦から、列車による脱出、そして忍び寄る屍たち。ぎりぎりで突破していく読み味がかなり楽しい一冊です。同著者の吸血蟲もまたゾンビ/吸血鬼亜種でして、SIRENめいた味わいがいくらかあります。詰めの甘さを前提に含めてB級ということで楽しめる作家にござい。

 グロさで攻めるなら一本しかあげようがありませぬ。
「地獄の釜開き」
著者:友成純一
出版芸術社刊「狂鬼降臨」収録 2009年発売 価格:1,575円
 破滅的色彩でこの短編以上のものはなかなかないのです。人が死ねなく、どこまでも死ねなくなった世界を舞台にした超暴力(アルトラ)爆発小説で、とにかく胸糞悪いスプラッタ。八〇年代のエログロ感を総ブッコミした短編小説といえましょう。少女を砂浜に埋めて云々という残虐行為を楽しむためだけのお話なので、誰も彼にもとおすすめはしがたい逸品です。
 人間性を損壊させ、崩れた肉と腐臭を一身にたずさえた描写の数々はヤメタゲテヨォ! と言いたくなること醒めない悪夢の如し。他人の悪夢を覗きみているような心地の破滅がドタバタと進むのですな。お食事中に読むと間違いなく胃の収まりどころがわからなくなる、大層、極めて、ハイパーエクストリームギャラクシー厭なお話です。方向性で言うとドイツスプラッタ的汚さ。これを収録した友成純一氏の短編集、狂鬼降臨そのものが吐き気をもよおす描写の数々で飾られているから、この短編自体は存在がかすみがちなんですけど、実にきっちりまとまっていて(好事家には)素敵なお話です。
 ただ本当にグロいので、読んでてしんどくなります。超しんどい。

 これも忘れてはなりますまい。なにせ名作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」公開から二十周年を記念したアンソロジーです。
「死霊たちの宴」
アンソロジー 上下巻構成
東京創元社刊 1998年発売 価格:672円
 序文はジョージ・A・ロメロ御大が担当。筆者が翻訳物のゾンビ小説に触れたのは、このアンソロジーが最初でした。
 玉石混淆とはよくいったもので、このアンソロジーも例に漏れず、その枠内にあります。そういったなかでも素晴らしいのが、悪党同士のかけあいが妙にカッチョいい西部劇――「キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯れるの記」。下巻収録作品。「ババホテップ(プレスリーvsミイラ男として映画化)」や、正義と熱き心というアメリカが抱く御伽噺で彩られた現代式西部劇「凍てついた七月」などを書いたランズデールの作品なんですが、これが本当に楽しい。砂塵けぶる魔の世を駈けずる賞金稼ぎ、追われる悪党、そしてクリスチャンカルトの戦いが限られたページの中でころころと転がっていくのですよ! カルトが築いた屍者の王国を舞台にした大活劇は、どこか懐かしくもあります。ラストの詩的なことば運びもよい。
 他にもキッチャナイ描写で、腐肉やらなにやらを切り出していく「聖ジェリー教団vsウォームボーイ」なんかが笑えてよござんす。良作は下巻に揃っている印象の強いアンソロジーにござい。
 前述の長編小説「ウェットワーク」の原型になった「始末屋」もまた、このアンソロジーの上巻に収録されたものでした。内容自体は意識のあるゾンビ集団が人間狩りをしており、その一員たる主人公が疑問を抱きながらもどうこう、みたいな。銃撃戦が書きたかったんだな、わかる、という話。わかりみはあるけどそんな面白くはない。ちなみに上巻の白眉は文学性や終末感の強い中編「選択」にあります。寂寞とした語りは、しずしずと世界がダメになっていくお話が好きな人にはたまらないかも。
 各作品に良し悪しはあれ、ゾンビ方面のオタなら必携の書です。
 上巻収録作品――「花盛り」チャン・マコンネル/「森のレストラン」リチャード・レイモン/「唄え、されば救われん」ラムジー・キャンベル/「ホーム・デリヴァリー」スティーヴン・キング/「始末屋」フィリップ・ナットマン/「地獄のレストランにて、悲しき最後の逢瀬」エドワード・ブライアント/「胴体と頭」スティーヴン・ラスニック・テム/「選択」グレン・ヴェイジー/「おいしいところ」レス・ダニエルズ
 下巻収録作品――「レス・ザン・ゾンビ」ダグラス・E・ウィンター/「パブロフの犬のように」スティーヴン・E・ボイエット/「がっちり食べまショー」ブライアン・キング/「キャデラック砂漠の奥地にて、死体と戯れるの記」ジョー・R・ランズディール/「サクソフォン」ニコラス・ロイル/「聖ジュリー教団VSウォームボーイ」デイヴィッド・J・ショウ/「わたしを食べて」ロバート・R・マキャモン

 さて、長々と書いてまいりましたが、あなたの読書生活の参考になったでしょうか。
 拙文から何がしか得るものがあったら幸いと思いますー。
(2017.01.リスト内容追記)

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