後書き。あと言い訳。
[きみ]と。:PostScript
 ほんとうならば、イチャつきとか幸せな時間に軸をおき、じっくりと語ったほうが、読む側に親切で楽しいものにもなりはしたのだろうな、とは思います。駄菓子屋で買った紙風船を膨らませ、公園でルールなしのバレーボールをやりあうような、そういう楽しげな時間を描くとか。そういった楽しげも大きな魅力がありましょう。
 かといってそれを上手に書けるかといえば別であるのも事実。結果として文庫本、つまり三九文字を一七行という角川文庫に換算して百二十ページ分という分量を費やしながら、斯様なお話となりました。なってしまいました。
 そも、森見登美彦氏の調子を借りつつ語ろうとした当短編ですが、恐らくその目論見は四畳半一話分くらいの分量でやろうという計画とともに破綻しているのでしょう。九十二ページには収まりきりませんでしたし、文体もいくらか崩れております。
 また分量や形式だけでなく、これ以上の時間をかけていられないということで、収めきることができなかったエピソードもいくつかあります。例えば小烏丸がついて廻っていた一つ目のお姉さんのことだとか。正直、自分でもソレハドウナンと思う部分もそれなりに多いのです。しかし、そうした隙も多いのですが、ボクにとっては愛おしい短編です。
 一読して愉快に思っていただければ感激ですし、頭をボリボリと掻き毟ってハゲる要因を作りつつ書いた甲斐もあったというもの。どころか読み終えたあなたが小烏丸や都々目さんといった女の子共を、可愛らしいなんて思ってくれたなら、それはもう至上の幸せ。あの子たちの恋の行く末はアンナカナ、コンナカナ、と想像していただけるといいな。そんなことを、密かに思います。
 最後に言い訳として、引用をひとつ。

 “したがって、そのうれしはずかしな妙味を逐一書くことはさし控えたい。
 読者もそんな唾棄すべきものを読んで、貴重な時間を溝に捨てたくはないだろう。
 成就した恋ほど語るに値しないものはない。”

 彼女たちに、今後語られぬ、楽しき日々がありますように(とブン投げる)。
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